1月8日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)はSDN(Software-Defined Network)に対応したネットワーク製品を発表した。製品発表会では、Software-Defined DataCenterへの取り組みやHPネットワークの現状、SDNの戦略などが説明された。
SDN対応スイッチは1500万ポート出荷済み
HPは「Converged Infrastracture」をキーワードにサーバー、ストレージ、ネットワークの3分野をトータルで展開している。このうちネットワークに関してはSDNにも注力しており、昨年からOpenFlow対応の商用スイッチを市場投入している。今回は、SDNを実現するインフラ層、コントロール層、アプリケーション層のレイヤーすべてに製品とサービスを提供すると発表。これにより、アプリケーションの実行環境を迅速に提供し、管理工数の削減や複雑性の排除を実現していくという。
発表会の冒頭、常務執行役員 エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 杉原博茂氏は、手作業で運用管理を行なってきた「エンジンルームモデル型データセンター」を脱却し、自動化と集中管理を実現する「Software-Defined DataCenter」に移行していく必要があると強調。同社が2009年から展開しているHP Converged Infrastractureの戦略が徐々に実を結び、Software-Defined DataCenterに最短となるポートフォリオを拡充できているとアピールした。
また、OpenFlowに関しては、2007年からスタンフォード大学とともに研究開発を進めているほか、すでにOpenFlow対応の製品についてはすでに1500万ポート以上の出荷実績があると説明。今後重要になるサーバーやストレージとの連携においてもHPの強みが活かせると強調した。
続いて、2012年8月にHPネットワーク事業本部 事業本部長に就任した多田直哉氏が、HPネットワークの事業戦略について説明した。多田氏は、スイッチやワイヤレス、ルーターなどの分野での高いシェア、シャーシ型からブランチまでの幅広いラインナップなどの強みをアピールする一方、日本ではまたHPネットワークのシェアが一桁台にとどまっていることを指摘。今後はネットワークインテグレーターとの戦略的なアライアンスと、サーバーやストレージを組み合わせたインフラ提案というセグメントごとの戦略を展開し、3年以内に20%のシェア獲得を目指すと説明した。
SDNコントローラーをHPが提供へ
SDNへの取り組みや新製品については、サーバー・ネットワーク製品統括本部 インダストリアルサーバー・ネットワーク製品本部の尾﨑亨氏が説明した。尾﨑氏が指摘したのが、現在のデータセンターでは物理デバイスを接続するためのネットワークになっているため、柔軟性や俊敏性が低下しているという点。SDNをベースにしたSoftware-Defined DataCenterでは、物理ポートや設置場所の制約にとらわれない柔軟で俊敏性の高いシステム構築が可能になるとアピールした。その上で、従来のネットワークは、ベンダー独自の技術を用いて、多くのネットワーク専門エンジニアが支えてきたと指摘。HPのネットワークでは、業界標準のオープンな技術でユーザーとサービスをつなぎ、インフラエンジニアが構築・運用できるアプローチだと説明した。
こうしたSDN戦略の中、発表された今回の目玉は、コントロール層を担うSDNコントローラーの開発意向だ。「HP Virtual Application Network SDN Controller」と呼ばれる同社のSDNコントローラーでは、OpenFlowスイッチのコントロールを可能にするほか、サードパーティやインフラデバイス、クラウドとの連携を実現するAPIを幅広く公開する。HP Virtual Application Network SDN Controllerの出荷は2013年の下半期を予定している。
インフラ層を担うスイッチに関しては、現在業界最多を謳う25機種でOpenFlow 1.0をサポートしている。2013年はOpenFlow対応機種を拡大するともに、ファームウェアのアップデートにより、OpenFlowの最新バージョンに対応する。また、40GbE対応機種の拡大や長距離への対応も行なっていくという。
あわせてハイエンドスイッチである「HP12500シリーズ」においては、レイヤー3で接続されたデータセンター間をレイヤー2で相互接続できる「Ethernet Virtual Interconnect(EVI)」の機能を追加する。シスコのOTV(Overlay Transport Virtualization)を超える最大8サイトの接続、4000を超えるVLAN処理が可能になっている。また、1つの物理スイッチを最大4個の論理スイッチとして仮想化する「Multitenant Device Context(MDC)」もあわせて提供する。EVIと連携することで、最大32テナントを実装することが可能になる。

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