一般的なPCスピーカーは1万円以下が中心で、前回紹介した3万円クラスでも結構な高価格になるが、このジャンルにもハイエンドモデルが存在する。初めてのPC用スピーカーを選ぶというASCII.jpの編集H(今回のレクチャー相手)におすすめできるものではないが、ハイエンドモデルの実力も試しに聴いてもらうことにした。
ボーカルのしなやかな描写にほれぼれとする
B&W「MM-1」
Bowers & Wilkins(B&W)はイギリスの著名なスピーカーメーカーで、800Dシリーズなどの超高級スピーカーなどもラインナップしており、熱心なオーディオ好きにもファンは多い。
同社では、iPod用スピーカーとして「Zeppelin」シリーズなども発売している。MM-1の実売価格は5万8000円前後となかなか高価だが、1個のユニットだけで全体域を受け持つフルレンジスピーカーが多いなか、高域用と低域用のそれぞれのユニットを使用した2ウェイスピーカーとなっている。
高域用のツィーターには、ユニット後方から放射される音の共鳴を緩和するノーチラス・チューブを搭載するなど、同社の高級モデルに採用される技術も盛り込まれている。
編集H:天板や中央部のベルトにアルミを配するなど、スピーカーっぽくないデザインですね。一緒に置くPCのデザインにもこだわりたくなります。
鳥居:ボディ前面を取り外しのできないカバーで覆っていることもあって、個性的な外観となっています。
編集H:音は声の質感がとても豊かで驚きますね。しなやかというか、きめ細かいというか。
鳥居:その点ではさすが高価なスピーカーという気がしますね。中域がとても充実していて、ボーカルの微妙なニュアンスや表情が鮮やかに浮かびます。低音も割と出ているのですが、量感もほどもどであまり迫力を打ち出すタイプではないです。控えめというか上品な印象かな。
編集H:スムーズすぎて、ちょっとインパクトには欠けるかも。
本機はUSB入力とアナログ入力を備えており、PCとの接続はUSBで行なう。接続すると自動的にオーディオ装置として認識されるので、音楽再生だけでなく、すべての音がスピーカーから出力される。このあたりの使い勝手は一般的なUSBスピーカーと同様だ。
音質はあっけないほどスムーズで、滑らかな感触だ。低音は最低域までよく伸び、ベースの音階をしっかりと鳴らし分ける解像度の高さもある。そのわりにあまりパワー感を感じさせず、自然に鳴らしてしまう。
そのよさを一番感じるのはやはりボーカル。坂本真綾の「バディ」を聴いても、吐息のニュアンスがびっくりするほど色っぽい。バックの演奏を従えてボーカルにスポットライトが当たるように、ボーカルの存在感を際立ててくれる。
ベートーベンの「第9」でも、オーケストラは整然ときめ細かく再現されるが、一歩引いたような落ち着いた印象になる。一聴すると上品すぎて物足りない感じもあるのだが、じっくり聴き込むとその表情の豊かさに感心する。
鳥居:いわゆるHi-Fiオーディオというより、普段着感覚というか気軽な印象はありますね。でも、本質的な実力は高いので、普段着とはいえ着心地も仕立ても上質です。
編集H:ロックやポップスを元気よく聴きたい僕からすると、上品すぎる感じですね。
鳥居:それは言えますね。どちらかというとポップスでもアコースティック楽器主体の演奏や、クラシックなら小編成の室内楽を気持ち良く聴く方が相性が良さそうです。
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