クリプトンは17日、同社直販サイト“KRIPTON Online Store”で、KS-1 HQMの限定バージョン「KS-1 HQM(M)」の販売を開始した。
KS-1 HQM(関連記事)は、USB DACやデジタルアンプを内蔵したコンパクトなモニタースピーカーで、USB端子搭載のPCおよび光デジタル出力付きのオーディオ機器との接続が可能。24bit/96kHz入力に対応する。同社音楽配信サイトの“ HQM STORE”で販売されているハイレゾ音源などを高音質に再生できることをうたっている。
カナリヤ色のポップかつアンニュイなカラー
今回販売されるのは、MacやiPhoneとの連携を意識したホワイトバージョン(関連記事)に続く、新色“カナリヤイエロー”を採用したモデル。ジャズ&ラテン・ボーカリストMAYAとのコラボレーションを通じて企画を詰めた製品となる。すでに予約可能で、6月15日から100セット限定で順次出荷予定。
価格は5万9800円で、MAYAのサイン入りCD「BLUESY MAYA in Hi-Fi」が付属するほか、ハイレゾ音源とCDの音質の違いをチェックするため、HQM STOREで6月15日配信予定のハイレゾ版音源「BLUESY MAYA in Hi-Fi」(24bit/96kHz)の無料ダウンロード権も付属する。
直販のみの展開でありながら、発売以降約3000セットを出荷したとされるKS-1 HQM。今回の企画は、スタジオ収録の空気感をリスナーに伝えたいとするMAYAの思いが強く反映されている。
「レコーディングでは口先で歌詞を追うのではなく、それにつかり切る」と話すMAYAは、アルバムBLUESY MAYAでは、男女の性(さが)の表現にこだわった。
「女性の甘える、すねる、冷たくする。そんなモードを声で表現したい」
アルバム制作に当たっては、1ヵ月前からモードを切り替え、精神統一して録音に臨むのを常とする。しかし、レコーディングスタジオで確認した生々しいプレイバック(モードと空気感)がCDにミックスダウンした際に半減してしまうことに残念さも感じていた。そんな折、ハイレゾ音源の存在を知り、録った音の魅力がそのままリスナーに届くことの感動を実感したという。
収録の際には、耳元でささやいているような実在感や雰囲気を出したいとエンジニアに伝えたとするが、仕上がった音源を聞き、「人のぬくもりや気配が伝わることに驚いた」とも話す。
一方限定モデルの企画に際して、クリプトンの試聴室で聴いた音のクオリティーには、手ごたえを感じた。「人間的な音を出せるスピーカーにいいタイミングで出会えた」と話している。ただし、色に関しては意見もあった。オーディオというと黒く重厚な男性の趣味というイメージがある。女性の部屋に違和感なく置け、価格も手ごろ、しかも音は確かな製品が必要だと考えた。
そこでカラーリングには女性にも男性にも薦められる中性的な配色である黄色を選択。その中でも少し薄くさわやかさを感じさせる“カナリヤイエロー”とした。黄色にするという点ははじめから決めていたが、複数あるサンプルの中から迷いつつ、かわいくて少しアンニュイな印象もあるこの色を選んだという。
また、オーディオ評論家で“女子オーディオの会”を通じて、女性にもいい音で聴くことの楽しさを伝えている林正義氏は「スタジオには完璧な音が存在している。音をマイナスにせず、鮮度をなるべく伝えなければならない」とする。昨年末LANDMARK STUDIOでの録音に立会い、楽器とマイクの距離を近く設置し、ドラムなどの収録では音圧の取れる太いマイクを使用するなど、音のニュアンスを重視する制作者の意図を目の当たりにした。
現場ではクリプトン10周年を記念してリリースされたHRシリーズから、電源ボックスやインシュレーター、ケーブルといったアクセサリーを準備し、「オーディオファンの感性をスタジオに持ち込んだらどうなるか?」を提案したという。
一般的に家庭用の機材はスタジオ機器とは異なる意図で設計されていることに加え、スタジオのエンジニアは自ら工夫しながらケーブルや電源を追求している例が多い。そのためこうした提案には積極的でないケースもままあるが、快く受け入れてもらえたという。
林氏は、女子オーディオの会を通じてMAYAと親交を深めており、今回の企画でクリプトンとMAYAを引き合わせた人物でもある。
スッキリとして滑らか、さりげないリアルさを示すハイレゾ音源
17日の発表会では、OPPOのユニバーサルプレイヤーとKS-1 HQM(M)を利用した比較試聴も実施された。このプレーヤーは音楽CDの再生はもちろんだが、ハイレゾのFLACファイルを焼いたDVDなどの再生も可能。プレーヤーの条件を揃えた状態で、CD品質とハイレゾ品質の比較ができる。
曲は「When you're Smiling」。以前の試聴を通じて、楽曲の情報量を的確に描き分ける、KS-1 HQMの実力は理解していたつもりだが、改めてのそのポテンシャルに驚かされる。左右を十分に離したゆとりある設置方法で、サウンドステージは十分な広さを持つ。フルレンジというメリットもあってか、定位も良好。低域も小型とは思えないほど豊かで広めの試聴室でも十分な力感がある。
CDに続いて再生されたハイレゾ音源では、この空間がよりスッキリと意識できた。続いて感じたのがボーカルの滑らかな質感。そしてCDでは多少ボンヤリとし、中抜けしたような感覚もあった中低域に密度と明瞭さが加わる。誇張はなく、むしろ部屋の温度が数℃下がったかのようなクールで落ち着いた雰囲気だ。表現される空間はとてもさりげなく自然。録音された音という事実を忘れさせるように癖がない。それがまたリアルさにつながる。
BLUESY MAYA in Hi-Fiは、CD版およびハイレゾ版に加え、アナログレコード盤も用意されているとのこと。ハイレゾ版の一部は試聴用データが音楽配信サイトでも提供されているそうなので、合わせて体験してみるのも面白い。
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