音楽と真っ正面から向かい合いたい人におすすめ
クリプトン「KS-1 HQM」
鳥居:続いては、クリプトンの「KS-1 HQM」です。こちらも定価が4万9800円と高めですが、PC用の高音質スピーカーとしてかなり知名度が高いモデルですね。
編集H:専用のスタンドが凄いですね。重さもずっしりとしていて驚きました。
鳥居:クリプトンはオーディオ用のボードや電源ケーブルなどのオーディオアクセサリーも販売しているメーカーなので、そのあたりの特徴を活かし、スピーカーのグレードを高めるアイテムをセットにしています。音質にこだわる人にはこういう本格的な装備は気になりますね。
編集H:ACアダプターの電源も太いですね。
鳥居:別売もしている高級OFCケーブルです。電源ケーブルは音質改善の効果も高いので、音質的にはかなり期待大です。
評判がいいモデルだけにかなり期待して音を聴いてみた。まず、感じたのは音数の多さ。一音一音がとてもクリアに再現される。フルレンジ構成のため定位も明瞭だ。気になる低音も前回聴いたボーズやオンキヨーのような重量感では劣るものの、力感を含めてしっかりと鳴る。それでいてベースの音階が不明瞭になるようなあいまいなところもなく、ビシッと正確な鳴り方をする。
ベートーベンの第9はステージの広がりやホールの響きといった空間の再現まで鮮明。高域がやや穏やかなため、色彩感としては暗めのトーンになるが定位のよさと相まってそこにオーケストラがいるような実在感を味わえる。
唯一気になったのは、ボーカルものの表情がやや硬いというか、生真面目な感じになったこと。このあたりは好みの差もあると思うが、もう少し表情の豊かさやしなやかさがあってもよさそうだ。
編集H:クラシックのコーラスで、合唱する人の人数がわかるような気がするくらい、音の粒立ちがいいですね。いわゆるHi-Fiスピーカーのイメージに一番近いです。
鳥居:間違いなくHi-Fiスピーカーを意識した音に仕上げていますね。音離れのよさはもちろん、音色の再現や細かなニュアンスなど、非常に忠実感のある再現です。これはもう、Hi-Fiオーディオの入り口にある音だと思いますよ。
編集H:聴いているうちに背筋が伸びるというか、仕事をしながらとかではなく、真面目に音楽を聴きたくなります。
鳥居:そこがまた悩ましいところですね。仕事中にBGM的に使うのはもったいないと感じてしまうかも。
本機の光デジタル入力を試すため、ネットワークプレーヤーと光デジタル接続して同じ音源を聴いてみた。USB接続の方が音に芯があり、密度感の高い印象もあるが、一音一音の正確さや低音の再現などには遜色がなく、なかなか優秀だ。これなら、デジタル出力を持つCDプレーヤーなどと接続してもいいし、テレビ用スピーカーとしてじっくりと映画を見るのにもいい。
普段は5.1chシステムで映画を見ていて、サラウンドの映画はサラウンドで聴くのが最良と思っている筆者でも、ある程度実力の高いステレオスピーカーなら、サラウンドの包囲感や移動感がなくても十分鑑賞に堪えると思ってしまう。
また、より高音質を求める人にとって、本機は24bit96kHzのハイサンプリング音源にも対応している。同社が行なっている音楽配信サービス「HQM STORE」などで購入できる高品位ソースもその情報量豊かな音を堪能できるのだ。機能も含めて考えると、5万円といってもかなりお買い得に感じてしまう。
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