現在の一般的な音楽鑑賞のスタイルは、屋外ではiPodのような携帯プレーヤーやスマートフォンで、屋内では楽曲などを管理しているPCで直接音楽を聴く、というのが主流と言っていい状況だ。
実際のところ、現在のPCでは音楽再生どころか、テレビ視聴やBD/DVDソフトの再生もできるAVマルチプレーヤー機能を普通に有しているので、ちょっとしたPCが1台あれば、オーディオ機器どころか、ミニコンポもAV機器もテレビさえも不要なのだから、当然と言えば当然である。
一方で、わざわざオーディオ機器やAV機器で音楽や映画ソフトなどを鑑賞するのは、画質・音質にこだわるためだが、PCユーザーのすべてが画質・音質など気にしていないわけではない。実際のところ、PCを使ったオーディオ再生はかなりディープな世界もあり、高音質化のためのさまざまなテクニックやノウハウが膨大にある。
今回はあまりディープなところまで踏み込まないが、PCによるオーディオ再生で、なるべくいい音で音楽を楽しむことをテーマにしたい。レクチャー相手は、ヘッドフォンや携帯プレーヤーなど、モバイルオーディオ環境にそこそこお金をかけている編集部員Hである。
鳥居:というわけで、今回はPCで高音質再生をするための方法なのですが、ぶっちゃけ音質にこだわったPCなどもあるのでそれを選ぶというのもアリかと。
編集H:そういうモデルは結構値段が高くなるし、今使っているPCがスペック的には十分なので、それを使って再生環境をグレードアップしたいなぁ、と。
鳥居:そのシステムは、どんなもの?
編集H:普通のノートPCの内蔵スピーカーで音楽を聞いています。
ノートPCの内蔵スピーカーでも、音楽再生は問題なくできる。ただ、これは薄型テレビの内蔵スピーカーと同様で、小さなスペースに小さなスピーカーを内蔵するため、低音再生などは不利だし、音質的には十分とは言いにくい。
また、AV指向の強いモデルでは、複数のスピーカーを内蔵したり、低音用のサブウーファーを持つモデルなどもある。PCごと買い換えるのなら、こうしたモデルを選ぶという選択肢もあるだろう。
現在持っているノートPCなどを使って高音質化を図るなら、PC用スピーカーの追加が一番手っ取り早い。PCの両脇にスピーカーを置くだけだから置き場所も心配ないし、あまり難しいことを考えずに手軽に使えるのが魅力だ。
鳥居:PC用のスピーカーには、簡単に言うと2種類あります。ひとつは一般的なアナログ入力だけのアクティブスピーカー、もうひとつはUSB端子を備えデジタル信号を直接取り出せるUSBスピーカー。
編集H:デジタル信号を取り出すUSBスピーカーの方が音質では有利ですか?
鳥居:PC内部の高周波ノイズの影響を受けにくいので、音質に有利であるのは確かです。ただ、結局のところはスピーカーの実力の差の方が大きいので、アナログ入力だけだからと言って音質が悪いとは一概には言えないですね。
USBスピーカーは最近になって注目されてきたように感じるが、実はもう随分前から登場している。現在のように注目されなかった理由はずばり「価格」だ。
現在でもこうしたPC用スピーカーは1万円以下のモデルがほとんど。スピーカーの価格としてはかなり制約は厳しい。USBスピーカーとなると、スピーカーに加えてUSB接続のためのインターフェースやデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバーターを内蔵する必要があるので、スピーカー自体が占めるコストはさらに少なくなる。
つまり、デジタル接続によるメリットより、スピーカーユニットなどのコストダウンによる音質的なデメリットの方が大きいものがあり、USBスピーカーはあまり好評ではなかったのだ。
編集H:そうなると、やっぱり音質を聴き比べてみるのが重要ということですかね。
鳥居:ばっさりと言い切れないのがこちらとしても歯がゆいけれども、そうなりますね。そういった背景もあって、アナログ入力のスピーカーはアンプ部やスピーカーにしっかりとコストをかけ、その分価格は高くなるけど音質はいいっていうモデルが増えてきた。特にボーズのようなスピーカーメーカーはその傾向です。逆にUSBスピーカーの方は部品コストが安くなってきたこともあって、比較的安価で実力もなかなかのモデルが増えています。

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