富士通と理研が共同開発した「京」が世界最速のスパコンになったのはご存じの通り。それまで首位だった中国の「天河一号」の3倍の処理能力での首位奪還だ。
ASCII.jpでは、さかのぼること2年前にジャーナリストの大河原克行氏による連載で「京」開発への意気込みを語る「世界一奪回への挑戦、日本のスパコン開発を背負う富士通」という記事を掲載しているので、興味がある人はぜひ。
さて、中国では「天河が日本のスパコンに抜かされたこと」がネットユーザーの間で大きな話題となった。特に老舗ポータルサイトの「網易(NetEase)」では、約2000件のコメントと7万件の記事コメントに対する、いわゆる「いいね!」ボタンがクリックされた。
国威発揚系技術の話題は久々に見たが、いつの間にか中国技術に対するネット世論は随分と変わったな、というのが筆者の感想である。
すなわち、数年前までは「中国人は愛国心を示せ! 製品を支持しろ! 日本をぶっ潰せ!」な意見ばかりだったが、今や「中国人は駄目だ。民度が低すぎる」「政府のやることは貧民の俺らには関係ない」「中国の天河には外国産のIntel製のCPU載っているだろ?日本の京は独自開発のCPUだぞ」「応用力がないからハードウェアは無駄な長物」「中国でナンバー1が取れるのはブラック社会や住みにくさ」といった、ネガティブな意見ばかりとなっている。
中国ではネット世論を誘導しようとする動きがあることが知られているが、ひょっとして「ネット利用者のみんな、謙虚になろうよ大作戦」なのだろうかと思ってしまう。
ちなみに、日本で話題になったのは、世界一獲得以上に「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃダメなんでしょうか?」で有名な、事業仕分けによる予算削減の影響が大きいと思われるが、中国では「大地震の後に1位を奪取したから、日本で話題になっているのでは?」と分析されている。
中国国内で三つ巴の開発競争
京の1位を含め、最新の上位500位までのスーパーコンピューターの情報は「TOP 500 SUPERCOMPUTER SITES」に詳しく書かれている。
2位の「天河」(中国)以下は、「Jaguar」(米国)、「星雲」(中国)、「TSUBAME」(日本・東工大)と続く。星雲は、中国科学院のバックアップがある「中科曙光」という、エンタープライズ向け製品のメーカーがリリース。同社のスーパーコンピューターで2008年11月に10位にランクインした「曙光5000」は、新華社が2010年4月に発表した記事によれば、上海で1台目が納品されてから2010年4月までに431台もの受注があり、読者を驚愕させた。
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