このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

週刊 PC&周辺機器レビュー 第106回

地デジも3Dで見られる一体型、新「VAIO L」を試す

2011年06月17日 12時00分更新

文● 池田圭一

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 パソコンの機能でもうひとつ注目したい点が、サウンド機能である。VPCL229FJ/Bには、本体下部左右に5.5W×2のステレオスピーカーが搭載されている。また、サウンドチップそのものはIntel HD Audio準拠のありきたりなものだが、VAIO Lシリーズにはソニー独自の高音質サウンドチップ「Sound Reality」と「S-Master」が搭載されている。さらに、前方2つのスピーカーからサラウンド音響を生み出す「S-FORCE Front Surround 3D」機能も備える。

「VAIOの設定」でサウンド効果を指定。Dolby機能も用意されているが、S-FORCE Front Surround 3Dのほうが圧倒的に音質がいい

 とくに後者のサラウンド機能は、非常に効果的であった。ベストな聴取ポイントは本体の前方中央のパソコン操作に適した距離に限られるが、音の混ざった単純な反響効果ではなく、楽器やボーカルの位置がきちんと定位したサラウンド音響となって再生された。VAIO設定ユーティリティでS-FORCE Front Surround 3Dをオンにしておけば、テレビやBD/DVDなどを含めた、すべての音声出力で高品質のサラウンド音響が聞けるのはうれしい。

既存のテレビ番組を3D化できる
シミュレーテッド3D

 VPCL229FJ/Bの最も重要な部分である、テレビ機能と3D機能について見てみよう。本機にはデジタル3波チューナーが2基と、「スグつくTV」用の地デジチューナー1基が搭載されている。Windows 7からの視聴・録画に対応するのは3波チューナー側で、スグつくTVチューナーは視聴専用となる。そのためB-CASカードが2枚が付属するわけだ。

「スグつくTV」のメニュー。高速起動させるため機能が絞り込まれているので、初期の受信設定なども詳細な調整はできない

 スグつくTVとは、Windowsを起動しなくてもテレビが見られる機能だ。パソコン側の電源とは独立していて、本体右上のボタン(あるいはリモコンの専用ボタン)を押すと、5秒ほどで映像が表示される。例えば、「帰宅時にすぐテレビを見たい」といったニーズに応えるもので、パソコン側の3波チューナーを使う録画はできないし、機能も極限まで絞られている。パソコン側のテレビ機能が起動するまでのつなぎ・オマケ的なものだ。

 スグつくTVでテレビを見ているときにリモコンの「TVアプリ起動」ボタンを押すと、Windows上のテレビ機能「Giga Pocket Digital」が起動したときに、映像表示が自動的にスグつくTVからGiga Pocket Digitalへと切り替わる。だが、チャンネルや音量が引き継がれるわけでもないので、再度操作する必要がある。またこのとき、スグつくTV側の電源もオフにはならない。スグつくTVとパソコン側テレビが両方動いているので、どちらのテレビを見ているのか混乱することもあった。

 Windows上のテレビ機能であるGiga Pocket Digitalは、VAIOで長く使われてきただけあり、さすがに細部の使い勝手が良く使いやすい。Giga Pocket Digitalテレビを見ている最中に、画面右下のエッジアクセス部にある「3D」アイコンにタッチすると、独自の「シミュレーテッド3D機能」により、2Dのデジタル放送を3Dステレオ映像に変換して表示する。

エッジアクセス部にある3Dマークをタッチするとシミュレーテッド3D 機能が有効になる

Giga Poke Digital視聴中に3Dマークにタッチすると、2Dのテレビ映像も3D化される

 実際に見ても、付属の3Dメガネで十分に3D映像を楽しめた。3D映像はまだまだコンテンツ不足だが、既存のテレビ番組でも3Dになるのはかなりのメリットだ。

シミュレーテッド3Dの設定は、VAIOの設定ユーティリティで調整できる。NVIDIAの「ステレオスコピック3D」機能のように、視聴中に奥行き効果などを調整できないのは残念

シミュレーテッド3Dの効果は、NVIDIAの同等機能と比べてやや控えめの立体感となっていた

 VPCL229FJ/Bは、24型ディスプレー一体型の高機能パソコンと、3D対応のフルHDテレビ&BDレコーダー、それにS-FORCE Front Surround 3D機能による高品質のサラウンド音響システムを、スマートに一体化した製品だ。直販サイト「ソニーストア」での販売予定価格(6月中旬より予約開始)は24万9800円。2Dテレビ放送を3Dに変換するシミュレーテッド3D機能はなかなか魅力的だが、スペックだけを見れば同クラスの一体型パソコンではかなり高額だ。

 一方で、多くの機能を集約した省スペース効果は抜群だ。家族で共有するAVパソコンというよりも、先鋭的かつ非常にパーソナルな機器といえる。VAIOオーナーメードで必要な機能をチョイスして求めるというのもいいだろう。CPU種別やメモリー搭載量、タッチセンサーの有無、チューナーの有無などが選べ、最小構成なら10万9800円からとなっている。

VPCL229FJ/B(試用機)の主な仕様
CPU Core i7-2630QM(2GHz)
メモリー 8GB
グラフィックス GeForce GT 540M
ディスプレー 24型 1920×1080ドット、タッチパネル
ストレージ HDD 2TB
光学ドライブ 記録型BDドライブ
テレビ機能 地上/BS/110度CSデジタル放送×2、地上デジタル放送×1(スグつくTV専用)
無線通信機能 IEEE 802.11 b/g/n
インターフェース USB 3.0×2、USB 2.0×3、IEEE 1394、HDMI出力、HDMI入力、コンポジットビデオ入力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅608×奥行き168×高さ429mm(最小傾斜時)
質量 約12kg
OS Windows 7 Home Premium SP1 64bit版
直販価格 24万9800円

■関連サイト

筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン