鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第20回
柔軟なシステム構成に対応する「PR-SC5508」と「PA-MC5500」
ハイエンドAVの世界を体験! オンキヨーのセパレートAVアンプ
2010年10月27日 12時00分更新
デジタル放送やBDソフトのようなハイビジョン時代のAVコンテンツを存分に楽しむには、薄型テレビなどの映像だけでなく、音声にもこだわらなければその魅力は半減してしまう。
というわけで、これまでも身近なホームシアターシステムやAVアンプなどを紹介してきたのだが、今回は一気にハイグレードなモデルを紹介したいと思う。
今回取り上げるのは、オンキヨーから29日に発売となるAVコントロールアンプ「PR-SC5508」(予想実売価格 25万円前後)と、スピーカーを駆動する肝心要の部分である9chパワーアンプ「PA-MC5500」(同20万円前後)のペア。日本では珍しいセパレートAVアンプである。
本機は、ありていに言ってしまえば、同社の一体型AVアンプの最上位モデル「TX-NA5008」(実売価格 34万8000円前後)を2つの筐体にセパレートして製品化したもの。最近のAVアンプは7~9chものパワーアンプを内蔵するため、上級機となるとかなりボディが大きくなる。それを2つに分けているわけだ。
PR-SC5008の外観は、一見すると普通のAVアンプ。前面には各種入力やサラウンドモードが表示されるディスプレーがあり、ボリュームをはじめ、入力切り替えのためのボタンを備えている。もちろん、背面には各種AV機器と接続するための端子群があるのだが、パワーアンプを内蔵しないので、スピーカー出力はない。代わりにプリアンプとの出力用として、バランス/アンバランスのプリアウトが用意されている。
PA-MC5500の方は、電源スイッチとインジケーター以外は何もない。端子類はAVコントロールアンプから信号を受けるバランス/アンバランス入力と、スピーカー出力があるのみだ。
パワーアンプは基本的に何かを操作する機器ではないからだ。アンプが2台となることで、置き場所を心配する人は少なくないと思うが、パワーアンプは電源オン/オフさえできるならば、スピーカーの裏側など邪魔にならない場所に置いてしまってかまわない機器なので、実は置き場所を気にする必要はあまりない(オートパワーダウン機能も備えている)。
何故、AVアンプをセパレート化するのか?
さて、もともと1つのボディに収まっていたものを、どうして2つに分ける必要があるのかを考えてみたい。それはつまり、アンプの分業化の一言に尽きるわけだが、まず、AVアンプが何をやっているかを簡単にまとめてみよう。
大きく分けると、映像処理部、デジタル信号処理部/ネットワーク信号処理部、アナログ信号処理部、アナログパワーアンプ部となる。これらを分類した根拠はそれぞれが扱う信号の周波数帯域の違いと考えていい。映像/デジタル信号/ネットワーク信号は種類こそ違うが扱う信号の帯域が近いので、低価格なAVアンプでは基板ごとひとつにまとまっていることが多い。
映像/デジタル信号/ネットワーク信号処理部はMHzクラスの信号を扱い、アナログ信号処理/パワーアンプ部は可聴帯域信号を扱うため、帯域はkHzクラスの信号となる。MHzクラスの信号を処理する回路が発生するノイズは、kHzクラスの信号を扱う回路に飛び込み、音質に悪影響を与えるので、なるべく回路同士を遠ざけ、電源などもできれば独立させて設計するのがAVアンプの基本。
アンプのセパレート化は、これを物理的に遠ざけ、別筐体とすることでノイズの影響を可能な限り排除する発想にある。
実はこの設計思想は、一体型AVアンプのTX-NA5008でも採用されていた。逆に言えば、同じ筐体内とはいえ、もともと分離して設計されていたからこそ、容易にセパレート化が実現できたとも言える。
そして、もう1つが電源の分離だ。回路を分離していても、電源部を共有していれば回路的には分離されているとは言い難く、グランドラインからのノイズの飛び込みなどの影響を受けてしまうのだ。TX-NA5008でも、オーディオ回路用、映像回路用、デジタル信号回路用に3つのトランスを使って、電源の独立を図っている。

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