このページの本文へ

TECH担当者のIT業界物見遊山 第15回

サイボウズ、ネオジャパンの10年を斬る

国産グループウェアベンダー2社の通知簿

2010年06月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

パンパン!(手の音)「はい、長かった2000年代も今日でおしまいです。長い不況のさなか、本当におつかれさまでした。今日は通知簿を配りますので、しっかり中身を確認して、次の10年に備えてくださいね。まずはサイボウズ君! 次にネオジャパン君!」。決して「告白」をもじったわけではない。ここでは日本のイントラネットを牽引してきたこの2社の2000年代を「個人目線で」振り返ってみたいと思う。

黎明期のWebグループウェアを支えた両社

 1997年創業のサイボウズは、中小企業向けのグループウェア「サイボウズOffice」の開発・販売元として知られる。創業時は松山を根城としていたが、その後大阪に本社を移し、現在は完全に東京を本拠地にしている。

 サイボウズOfficeが日本のグループウェアのデファクトといえるまでにのし上がったのは、やはり低価格・簡単・シンプルという製品の特徴に尽きる。松山時代の青野慶久氏(現CEO)に「簡単なんで使ってみてください」とCDを渡され、グループウェアなんてそんな簡単に使えるのかと思っていた私も、実際に使って驚いた。インストールから実際に導入するまでがとにかく簡単なのだ。そして、他の人に紹介すると、やっぱり便利なので驚く。イントラネットという言葉に違和感を感じつつ、業務向けシステムが大きく変わっていくという予感がしたモノだ。

 1992年創業のネオジャパンはソフトウェアの受託開発をメインに据えているという点で、パッケージソフトの直販をメインとするサイボウズと出自が異なる。desknet'sの先祖にあたるWebグループウェア「iOffice」も、もともとは電力会社の社内システム向けのアプリケーションを外販化したものという記憶がある。

 2000年頃、まだ横浜の内陸部にあったネオジャパンを取材しに行ったときに驚いたのは、すでにケータイへの対応を果たしていたことだ。iモードがまだ始まったばかりの当時、CompactHTMLで生成されたページを見たときは、正直こんなの使い物になるのかなと疑問を感じた。しかし、その後のケータイの普及はご存じのとおり。グループウェアのケータイ対応はもはや当たり前の機能として取り込まれている。

 中小企業向けのWebグループウェアの市場でガチンコだった両社は、法廷の場で一度争っている。ネオジャパンの「iOfficeV3」のユーザインターフェイスがサイボウズOfficeを模倣しているとのことで、2001年著作権侵害でサイボウズがネオジャパンを訴えたのだ。ビジネスアプリケーションの画面表示の著作権という今までにない訴訟で、業界でも大きな話題を呼んだ。判決に関してはいろいろな意見が巻き起こり、結局2003年5月に和解ということで決着が付いた。1つはっきりしているのが、Webグループウェアの市場がそれだけ巨大化し、お互いが無視できない存在になったということだ。

 サイボウズOffice 3・4の大きな成功のあと、サイボウズは東証マザーズを経て、東証二部への上場を果たし、拡大路線をとり続ける。エンタープライズ向けの「ガルーン」の投入や間接販売体制の立ち上げ、Web DBやCRM、SFAなど新製品の投入。2005年、2006年には企業買収を次々と行ない、もはやベンチャーといえないグループ規模へと成長した。一方、ネオジャパンはiOfficeの名称を「desknet's」に変更し、仕切り直しを図った。こちらもdesknet'sの機能強化はもちろん、営業支援やCRM、Webメールなどの新製品も投入していった。そして、SaaS・クラウドサービス「Applitus」もいち早く立ち上げ、多くの企業ユーザーをつかんでいる。

チャレンジ精神が両者の評価を分けた

 では、おこがましくも私が先生がわりとして両者の通知簿を付けると、ネオジャパンの評価のほうが高い。多くの人は東証一部への上場やメディアでの露出度、ドットコムバブル以降数少ないベンチャーの成功事例、そしてなによりCEOである青野社長のキャラクタなどを考えれば、サイボウズの成績のほうが高いと思うかも知れない。しかし、各科目の成績よりも、「いろんなことに積極的にチャレンジしましたね」という総合評価の方を重視したいと思うのだ。

 ネオジャパンは「チャレンジ精神にあふれており」、いい方を変えると「下世話」でもある。ブログが流行すれば、いち早く社内ブログ製品を投入。ASP・SaaSが台頭すれば、Applitusを立ち上げ、今はクラウド・コンピューティングを名乗る。前述したケータイ対応と同じく、AjaxやSilverlightを取り入れるのも相当早かったし、iPhoneのような最新デバイスにもすぐに対応した。とにかく流行言葉にいち早く反応し、製品を新しく見せるのに長けている。そして、3月にはSilverlightを使ったドキュメントコミュニティ「Libura」を立ち上げた。新しいことがとかくやりにくいこの時勢柄、流行のキーワードをどんよくに攻める姿勢が頼もしい。よい意味で、外資のようなマーケティングカンパニーに近いものを感じる。

 一方のベンチャーであるながらサイボウズは、実は「手堅く」、相当「腰が重い」と思う。ケータイ対応、ASP・SaaS立ち上げ、ブログやSNS系など、製品展開や事業プランをガッチリ練った後に発表してきた。裏を返せば、すべて他社の後塵を拝してきたわけだ。こちらは意外と堅実的な技術系の会社という印象。創業者たちの出身母体が大手ナショナルメーカーだったことに起因するのだろうか。

 で、もう1つサイボウズに弱点があるとすれば、実は「サイボウズらしさ」から脱却できないところかもしれない。ボウズマンやヘンテコなキャンペーン名に代表されるコテコテな芸風は、たまに発表会にもあらわれているのだが、最近無理をしているように見えてややイタイ。そろそろ王道を歩み、サイボウズらしさをあえて追求しなくてもよいのではと思うこともある。

 ただ、最近サイボウズはずいぶん変わってきたと感じられることも多い。単独での事業展開への限界を認めたうえでのマイクロソフトとの提携。モバイル向け製品に「KUNAI」というアルファベットの製品名を付けてきたのも、今までの彼らからすると意外な気がする。

 さて、両者がこの先クラウドの嵐にどう立ち向かっているのか? 5年後が楽しみだ。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    sponsored

    60年の時を超え「COBOL」がGitHub Copilotでよみがえる 勘定系アプリの“超難関”モダナイに7社が挑戦

  2. 2位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  3. 3位

    ITトピック

    IT技術者の8割超「AI生成コードには人間のレビューが必要」/「偽・誤情報を見破れる」と自信を持つ人はICTリテラシーテストの正答率が低い、ほか

  4. 4位

    sponsored

    「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

  5. 5位

    TECH

    攻撃するAIと防御するAI 日本企業のセキュリティ対策にいま何が必要か?

  6. 6位

    デジタル

    東京タワー相当の紙を“完全撤廃” 点検業務をkintone化した“現場ファースト”な改善術

  7. 7位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  8. 8位

    TECH

    パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求

  9. 9位

    デジタル

    IoTデバイスをサイバー攻撃から守る IoT向けゼロトラストの“3つのアプローチ”

  10. 10位

    ITトピック

    6割超の企業で「セキュリティは取引条件」 SCS対応も進む/パワハラと指導の違い、あなたの基準は?/AIへの危機感か 転職希望のIT人材が増加、ほか

集計期間:
2026年07月22日~2026年07月28日
  • 角川アスキー総合研究所