オンプレミスからBPOS、そしてホステッドクラウドのメリットとは?
SharePoint導入は3通りの方法を検討しよう
2010年05月13日 09時00分更新
本連載では、SharePointの基本構造について、またSharePointを有効活用するのに必要なアドオンパーツなどを含めて説明してきた。最終回は、SharePoint環境を用意して実際に使うための3つの形態、「オンプレミス構築」「SaaS」「ホステッドクラウド」についてご説明する。
基本は「2-1-2」のオンプレミス構築
従来型の、自社内にサーバーを設置してSharePoint環境を構築し運用する方法は、後述するクラウドとの対比でオンプレミス(on premise)と呼ばれている。
SharePointはWindowsベースのサーバー上で稼働する。サーバー1台にすべてのコンポーネントを乗せて稼働させることもでき、これはシングルサーバー構成と呼ばれる。投資額が少なくて済むため、小規模な導入やテスト導入の場合にはシングルサーバー構成が適している。
ただし、シングル構成はパフォーマンスや耐障害性の面では当然ながら限界がある。中小規模の企業がSharePointを業務で使うなら、むしろ後述するBPOSなどを契約したほうが安上がりだし、合理的なことも多い。
一方、数百人以上の企業で利用する場合には、負荷分散・パフォーマンス維持と耐障害性の観点から、複数のサーバー(SharePoint用語では「サーバーファーム」と呼ばれる)で構成するのが一般的である。そしてサーバーファーム構成の中でももっとも標準的なのが、通称「2-1-2」と呼ばれる、サーバー5台の構成だ。これはフロントエンド(FE)サーバー2台、インデックスサーバー1台、データベース(DB)サーバー2台、の組み合わせのことである。
FEサーバーは、ユーザー(PC)からのアクセスを捌きつつ、SharePoint本体が稼働する、サーバーファームの中核である。FEサーバーは、台数を増やすことで負荷が分散できる仕組みになっている。イメージとしては店舗のレジのようなもので、台数を増やすほど処理能力が上がる。
したがって通常は2台だが、ユーザー数が非常に多い大企業(おおむね5000人~1万人超)の場合には、ここを3台、4台と増やして対応していることがある。BP研究会の参加企業の中では、最大は7台だ。この場合は「7-1-2」となる。
やや話がそれるが、第5回で紹介したようなSharePoint関連のアドオン製品の価格は、「FEサーバー単位」になっていることが多い。つまりFEサーバー2台構成なら2ライセンス、3台構成なら3ライセンスを購入してくださいという価格体系なのだ。FEサーバーの台数はシステム規模とほぼ比例していると考えれば、実情に合った妥当な料金体系であろう。
一方DBサーバーのほうは、マイクロソフトのデータベースサーバー「SQL Server」を稼働させ、SharePoint上で扱われるすべての情報を実際に格納している。専門的になるのでここでは深入りしないが、DBサーバーは2台をペアにした「クラスタ」という構成にすることで、データの整合性を保ちつつ耐障害性を保つ仕組みになっている。台数を増やすことで性能を上げることは技術的に難しいので、ユーザー数が多い場合には台数は2台のまま、サーバーにより高性能なものを使うことでパフォーマンスを維持する。
またインデックスサーバーは、検索専用のサーバーだ。検索は、1つ検索クエリが投入されると瞬間的に負荷がはね上がりすぐに元に戻るという負荷特性がある。そのため、他のサーバーと同居させると、そちらの足を引っ張りがちになる。したがってサーバーを分けておくのがよいというわけだ。またSharePoint製品の仕様上、インデックスサーバーは基本的に1台しか持てない。2台持つ場合は、機能を完全に分担することになる。
以上のことから、サーバー構成は「2-1-2」がもっとも一般的で、ユーザー数は数百人~数千人までをカバーしている。それを超えると最初の数字だけが増えていき、たとえば「7-1-2」になったりするわけである。
ここまで、オンプレミスつまりサーバーを自社で抱える形態のSharePoint構築について説明してきた。しかしSharePointでは、サーバーを自社では持たず、いわゆるSaaSあるいはクラウドとして利用する形態も一般的になりつつある。とくにこれからSharePointを検討されるみなさんには、ぜひそのメリット・デメリットを考慮して、最適な形を選んでいただきたい。
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)
SaaSあるいはクラウドというサービスは、ここ半年で急激に一般的にも知られるようになってきた。SharePointも例外ではなく、SharePointをSaaS的に提供している企業がいくつかある。
そしてその代表格が、ほかならぬマイクロソフト自身が提供する「ビジネス・プロダクティビティ・オンライン・スイート」、通称「BPOS(ビーポス)」だ。BPOSには、SharePointをSaaSで提供する「SharePoint Online」以外にも、メールの「Exchange Online」、インスタントメッセージ(チャット)などを提供する「Office Communications Online」といったメニューも用意されている。
このサービスが始まった時は、筆者も正直驚いた。こうした「サービス」の分野はSIerなどのパートナー企業に任せ、「ソフトウェアのライセンス販売」に注力するのが従来のマイクロソフトのイメージだったからだ。SaaSを提供するには、巨大なデータセンターを構築しその稼働を保つとか、ユーザーに対する課金処理を行なうといった、「ソフトウェアライセンス」とは違う領域の能力が要求される。決して得意だとは思えないこの領域に直接進出したところに、マイクロソフトの本気度が感じられる。
そしてその価格も驚くほどの安さである。実はリアルコム自身もBPOSを使っているのだが、SharePointに限っていうとユーザー1人あたりの月額料金は700円くらい。年間でも1万円を切るのである。SaaSなので、オンラインで申込手続きを完了するだけで、すぐにその場で使い始めることができる。料金は何と月々のクレジットカード払いだ(笑)。
なおBPOSは、一般的な「BPOS-S(Shared)」以外に、大規模企業向けの「BPOS-D(Dedicated)」がある。こちらは社員5000人~1万人以上の大企業がターゲットとされているが、環境を自社で占用できるので、ある程度のカスタマイズなども可能である。
マイクロソフト以外のIT企業も、こぞって「クラウド」と宣言している中、今後同種のサービスも増えてくるものと思われる。
(次ページ、「ホステッドクラウド」に続く)

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