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Windowsアップグレード権付きクラウド管理ツールも提供

表示が違う!で移行できないユーザーもWindows 7へ

2010年10月13日 09時00分更新

文● 金子拓郎/TECH.ASCII.jp

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10月12日、マイクロソフトは3回目となる「メディア エクスチェンジ」を開催した。今回の主題はWindows 7の法人向け戦略で、コマーシャルWindows本部 業務執行役員 本部長の中川哲氏らが登壇した。

3回目のメディアエクスチェンジは、出荷後1周年を迎えたWindows 7のビジネス戦略が語られた

 Windows 7は、2009年9月1日に企業向けのボリュームライセンス、同年10月22日にPCへのプレインストールやパッケージ発売が始まっている。前バージョンであるWindows Vistaと比べ非常よい滑り出しのようで、ボリュームライセンスでは、2009年5月末の導入は約5360社、発表会の行なわれた10月12日には8208社に達しているという。加えてWindows 7をプレインストールしたPCの企業導入もあるため、1周年としては満足のできる結果のようだ。

マイクロソフト調査によるWindows 7の導入状況。国内法人団体の導入率は、1台でも導入があればカウントされる算出方法による値とのこと

 加えて、Windows 7の導入を検討している企業も増えており、「1年以内に導入予定」は2009年度に15.2%だったが、2010年度には42.8%に増加しているという。また、Windows Vistaへの移行が進まず、利用が続いているWindows XPについても、2009年度には継続利用が31.5%もあったが、2010年度は17.9%に低下している。

企業におけるWindows 7の導入予定とXPの継続利用。こちらはIDC Japanによる調査だ

 そして、このWindows 7の好調な出荷をさらに推進する施策として、今回発表されたのが、

  1. ビジネスPC移行推進
  2. デスクトップ仮想化(VDI)
  3. クラウド利用の管理サービス「Windows intune」

の3点だ。中川氏によれば、「迷っているお客様の背中をドンと押して差し上げる」施策だという。

ボリュームライセンスを割引価格で

 施策の1つ目「ビジネスPC移行推進」では、10月1日から12月31日まで行なわれる「Windows 7発売一周年記念 ボリュームライセンス割引キャンペーン」が紹介された。これは、Windows XP ProfessionalとWindows Vista Businessを対象に、Windows 7 Professionalへのアップグレードを割引価格で提供するものだ。

Windows 7の割引キャンペーン。対象プログラムやアップグレードOSなど、細かい規定があるので注意は必要だろう

 たとえば、Windows XPからWindows 7へのライセンスのアップグレードは、通常2万4600円のところ、2万2200円となる(価格は参照価格)。

蛍光灯に透かしての互換性チェックから解放

 ビジネスPC移行推進に関して、もう1つ紹介されたのが「Internet Explorer移行検証ツール」の提供だ。

 マイクロソフトが企業に対してWindows 7へ移行しない理由を調査したところ、移行にあたって一番困っているのは「アプリケーションが動かないとわかって(Windows 7を)回収することよりも、動かないかどうかを検証すること」だったという。特に、イントラネット内にも多数あるWebアプリケーションについて、ページ単位で動くかどうか検証するのが大変なのだという。

「Internet Explorer移行検証ツール」を解説するコマーシャルWindows本部シニアプロダクトマネージャの原田英典氏

 通常のクライアント・サーバタイプのアプリケーションであれば、クライアントのOSが変わったからといって、ユーザーインターフェイスが変わることはない。しかしWebアプリケーションでは、サーバ側のHTMLは同じであっても、表示に利用するWebブラウザ(のパーサー)のバージョンによって表示が変わってしまう。

 表示が変わったからといって、ユーザーがそれに気がついた時点で直せば問題ない気もする。しかし、日本の企業では「情報システム部門がすべてチェックし、問題ないとわかってからエンドユーザーに提供しろ」といわれてしまうそうだ。

 そのために、情報システム部門は何をするのか。なんとIE6とIE8でそれぞれWebの画面を印刷し、その紙を重ね合わせて蛍光灯にかざし、どこがずれているかを確認。そして、この作業を数百、数千ページに渡って行なっているのだという。中川氏もこの話を聞いた時は冗談だと思ったが、とある企業で実際に紙を透かしている場面を目のあたりにしたとのことだ。

 この作業を軽減するのが、先の「Internet Explorer移行検証ツール」だ。これは、

IECap
リスト化したURLをWebブラウザ(IE6~8)で開き、画像データとして保存
IEDiff
保存された画像データの内容を比較し、差異部分を検出

という2つのツールからなっている。IE6の環境とIE8の環境で、それぞれ同じWebサイトの画面をIECapでキャプチャし、IEDiffに読み込ませることで、全ページ中で80%以上ずれているページの抽出などが行なえる仕組みだ。

IE6とIE8の画面表示で、異なる部分を黒く表示する「IEDiff」

 特徴的なのが、「ゆらぎ」に対応する点。ドットの場所が1ピクセル違っていたり、グラデーションの始まりがわずかに違うだけで、コンピュータは違いと検知してしまう。しかし、これでは人間の目で違いのわからない差異まで抽出してしまう。

 そこで、IEDiffは、ある程度までのドットずれ、指定したRGB値までの色ずれを許容する機能が搭載されている。解説を行なった原田氏によれば、ゆらぎへの対応が可能なルールはIEDiffだけだという。

 一般のWebサイト管理者にも便利そうなツールだが、提供対象はMicrosoft Partner Network(旧認定パートナー)のデスクトップコンピテンシーを取得したパートナーのみとなる。システムインテグレーションが必要なツールのため、一般提供は行なわないとのことだ。

「Internet Explorer移行検証ツール」のシステム要件。一般に公開されないのが惜しいツールだ

(次ページ、「Windows 7への移行期を乗り切るデスクトップ仮想化」に続く)


 

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