Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第16回
国内メーカー11社を取材して得た現場の本音
Windows 7 ソフト開発最前線からの目線(下)
2010年05月07日 09時00分更新
今回の開発者インタビュー取材では、Windows 7への対応について、比較的簡単に行なえたというところが多かったが、そこに課題がなかったわけでもない。ここでは、取材で感じた、ソフトウェア開発の現場で直面している問題点などを考えてみることにしよう。
意外にも保守的なソフトウェア開発の現場
今回取材したメーカーの開発環境は、Visual Studioのほか、Delphiなど旧来の環境を使い続けているところも少なからずあった。長期に渡って開発(バージョンアップ)を続けているソフトウェアでは、過去の資産が多くあり、開発環境も従来のものを使い続けることは珍しくはない。Delphiで開発しているメーカーにはVisual Studioへの移行を検討しているところも多く、そろそろ16bit/32bit時代から32bit/64bitの開発環境へと脱却を検討しているようだ。また、同じマイクロソフトの製品でも、Visual BASIC 6のように“.NET Framework”登場以前の環境で開発を続けているところもあった。
手慣れた環境を使い続けたいのは多くの開発者が同じ気持ちだ。新しい環境に移行すること自体に手間や時間がかかるし、たとえ新しい環境で生産性が上がるとしても、その前の「移行の手間」自体は、直接ビジネスに結びつかない作業である。このため、移行が面倒だとばかりに、過去の環境を長く使い続ける開発の現場は少なくない。技術力やノウハウの蓄積があるがゆえに、新しいWindowsで古い環境に起因する問題が発生しても、比較的容易に解決(問題回避)ができてしまうため、必然的に利用期間は長くなりやすいとも言える。
ただ、開発環境の移行に当たって何か具体的なサポートが提供されているかというと、実際には各メーカーが(ミドルウェア開発などを)独自に進めているのが実情だ。このあたり、マイクロソフトからの情報提供の時期が期待よりも遅かったり、提供場所(サイト)が分かりにくかったりする。もっと積極的に示す必要があるのではないだろうか。
Windows ロゴプログラムへの対応
今回の取材では、「Windows 7ロゴプログラム」への対応を行なった企業も多かった(特にWindows Vistaまでは対応してなかったという企業も少なくない)。Windows 7ではロゴプログラムのテストが無償となり、開発者で自分でテストを実行し、結果をマイクロソフトに送ってロゴの認証を得るという手順に簡素化された。このため、メーカー側は自分たちの開発スケジュールの中で自由にロゴテストを組み込めるようになった。ロゴ取得のコスト(金銭面だけでなく時間や工数)が下がったため、ロゴを取得するプログラムが増えたと思われる。
普段は何の気なしに見ているロゴだが、Windows 7発売時のように多くのユーザーが新しいプラットフォームへと切り替わるタイミングでは、有無による影響が極めて大きい。Windowsに互換性があることを知っているユーザーでも、環境固有の問題やちょっとしたアップデートの差などでソフトウェアがうまく動かない、あるいは一部おかしな動作が起きるといった経験のあるユーザーも少なくないからだ。
そんなとき、新しい環境に確実に対応しているかどうか=ロゴの有無は、ソフトウェア選択のひとつの目安になるし、食品と違って賞味期限などが書かれていないソフトウェアパッケージでも、「最近きちんとアップデートされた」という安心感につながる。
メーカーにとっては、ロゴを取得したからといって、そのソフトウェアが必ず「売れる」というわけでもないが、ロゴがないことで競合他社製品と比べて不利になる可能性も否定できない。前述のようにロゴ取得のコストが下がり、以前に比べるて取得しやすくなったこともあるので、特に店頭でのパッケージ販売が主体のソフトウェアメーカーは、積極的にロゴを取得していくべきだろう。
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