Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第15回
いち早くWindows 7対応した国内メーカー11社を取材して
Windows 7 ソフト開発最前線からの目線(上)
2010年04月29日 09時00分更新
この連載では、Windows 7の一般販売(2009年10月22日)直後や間を置かずに対応した国内のソフトウェアメーカーを11社取材した。今回と次回では、その取材活動を通じて感じたソフトウェア開発の現場の様子や、率直な意見・感想など、記事にしきれなかった情報をフォローしつつ、まとめていきたい。
Windows 7対応にさほど苦労しなかった各社の理由
取材先はいずれも、長らくWindows用ソフトウェアを開発してきたメーカーであり、実際に訪問してみると、店頭でよく見かけるパッケージソフト以外にも、企業向け製品など、一般的には名前やメーカー名には注目されていないものの、知る人ぞ知るといった製品を手がけるなど、実績を持つ企業ばかりだった。
まず、どのメーカーも“Windows 7への移行”自体には、それほど「苦労しなかった」とほぼ一様に回答したことが印象的だった。もちろんそれには理由があり、今回取材したメーカーの大半がWindows Vista対応を済ませており、Windows XPからWindows Vistaへの移行と比べて、Windows 7対応は易しいと感じたからのようだ。
Windows Vistaでは、セキュリティの観点から大きな仕様変更が行なわれており、たとえば、従来はアプリケーションが自身で作成したデータを保存する際には、「C:\Program Files以下のインストールフォルダ」を使うことが多かった。しかし、プログラムフォルダへの無制限な書き込みはセキュリティ上のリスクが伴うため、Windows Vistaの通常ユーザーではこれが禁止されて、管理者権限が必要になった。
互換性を保つために、「C:\Program Files以下」へのアプリケーションからの書き込みや変更権限のないレジストリへの書き込みは、別の場所に行なわれる(ファイル、レジストリの仮想化)。このため、従来のWindows XP対応アプリケーションでも互換性は保たれるものの、アプリケーションの再構成やOSアップデートなどで問題が起きる場合がある。
たとえば、ファイル仮想化によって、Program Filesフォルダーの外にアプリケーションのファイルが置かれた場合。Windows XP対応のアップデートプログラムが管理者権限で、Program Files以下のフォルダのファイルを更新しようとするのに対して、仮想化されたファイルは別の場所にあるため、更新されないことがある。そうなると、アプリケーションが通常権限で起動したとき、更新前のファイルにアクセスしてしまう可能性がある。
こうしたWindows Vista対応を済ませていれば、Windows 7対応はアプリケーションの機能などにも依存するものの、比較的簡単に済むというのが実情のようだ。逆に、Windows Vista対応の開発(プログラムのアップデート)を行なわず、Windows Vistaの用意した互換性機能に依存していた場合、いきなりWindows 7対応させるとなると、まずWindows Vistaで改良された部分にも対応しておく必要があって、敷居が高くなる。
以上のことから、新しいWindowsへの対応は、バージョンアップごとに段階的に行なうべきであり、仮にOS側の互換性機能で問題なく動作しているように見えても、それは新Windowsに正式対応するまでの猶予期間と見るべきなのだろう。前述のフォルダ仮想化も、たとえばユーザーが「UACを切ってしまう」と、今度はアプリケーションからProgram Files以下のフォルダへのアクセスが可能になってしまう。これにより、新たな問題を招きかねないわけだ。
また、Windows 7対応ではないが、取材の中で関連するWebアプリケーションにSilverlightを採用する動きも目立った。Webアプリケーションは、クライアント側の実行環境や状態によらずほぼ同様に実行可能なため、ネットワークを利用する業務アプリケーションでも普及しつつある。ただ、Silverlightも3.0から4.0への過渡期で、開発者側は比較的情報が多い3.0対応で開発を進めている企業が多かった。このあたりはマイクロソフトに対しても、技術情報や開発ツールの提供、事例紹介などが求められているようだ。
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