ワークステーションやサーバ向けのマザーボードと言えば、現在Xeonマザー発売するSupermicroやTyanなどが有名だが、これらがサポートする電源は、一般的な20ピンのATX電源とは少々異なっている。このため電源の選択肢が非常に狭く、先日登場したIwill製Xeon用マザーボードのように、専用電源をセットで販売するケースも珍しくない。そんななか、これら特殊な電源コネクタを持つマザーボード向けの電源が2種類登場し、販売が始まっている。
電源規格を再整理
ここで電源の規格を少し整理しておこう。現在標準的な電源規格はATXの“ATX2.03”。ATX電源はプロトタイプの1.0からスタートし、普及が始まったのはATX2.0からだ。+5VSBを明確に規定(0.7A以上)したのがATX2.01であり、タイミングなどの細部が規定されたのが現在主流となっているATX2.03だ。現在販売されているATX電源はほとんどがATX2.01またはATX2.03に準拠している。
ATX電源のメインコネクタは20ピンだ。“Pentium 4対応”がうたわれるATX電源は、これにプロセッサパワー用の4ピン(ATX12V)が加えられている。またATX電源には6ピンのAUXパワーコネクタが装備されているものも多い。AUXパワーコネクタは現在ほとんど利用されていないが、以前ワークステーション/サーバ用に用意されたコネクタ。+5Vと+3.3Vが規定され、主にメモリやPCIなどの電源供給に使用されている。
そしてこのATXをベースに拡張されたのが、いわゆるワークステーション/サーバ用電源規格だ。現在“SSI EPS”“WTX”という、どちらもIntelの提唱した2つの規格が存在する。
SSI EPSは最近のSupermicro製マザーボードで多く採用されているもの。ATXの20ピン電源コネクタに4ピン追加し、メイン電源コネクタが24ピンとなっているのが特徴だ。一方でピンアサインはATXの20ピンと物理的にも論理的にも互換性があり、SSI EPS規格を採用するマザーボードにATX20ピンのコネクタを差して利用できるようになっている。つまり、十分な容量さえあれば、20ピンのATX電源をSSI EPS電源の代わりに用いることもできるというわけ。
最近のSSI EPSは一般のATX電源と同じようにATX12Vが加えられ、“SSI EPS12V”と呼ばれが、Xeon用マザーボードではさらに8ピンのプロセッサパワーコネクタが追加、要求されている。ATX12Vがプロセッサパワー用であるにもかかわらずさらに8ピンが用意されるのは、CPUで使用される電力を考慮しているためだ。2GHzのXeonで最大約70W、デュアル駆動時には約140Wもの電力を消費することになる。12Vで換算すると12A近い電流が流れることになり、通常のATX20ピンやATX12Vだけでは配線にかかる負荷が大きすぎるためだ。
WTXはもともとPentiumIII Xeon(Slot2)を前提とした規格。PentiumIII Xeonがワークステーション/サーバ用CPUとしてそれほど普及しなかったため、現在では廃れてしまっている。
それでもその名残が業界には根付いており、Supermicro以外のXeon用マザーボードをリリースしているTyan、MSIやIntelはWTX規格に対応したミネベア製の電源を採用している。現在採用されているのは“WTX-PS2”という、WTXをベースにした規格。メイン電源コネクタは24ピンで8ピンのプロセッサパワーコネクタが用意される点はSSI EPSと同じだが、24ピンのピンアサインがまったく違うため互換性はない。
一方完全に独自規格となっているのが、初のデュアルAthlon MP用マザーボードとなったTyan「Thudner K7」用電源コネクタだ。コネクタ自体はSSI EPS12Vと同じだがピンアサインはこれもまったく異なり互換性はない。現在のところThunder K7と同じピンアサインのマザーボードが出るという話もなく、使いまわしは出来ないのが現状だ。
貴重なSSI EPS電源とレアなThunder K7用電源が登場
さて、今回登場した電源を見てみよう。まずはSupermicroの電源ブランドであるABLECOMから登場した420W SSI EPS電源「SP420-RP」。これまで流通していた電源は同ブランド製400Wの「SP401-RA」のみだったため、2製品目ということになる。ABLECOM製電源はメイン電源コネクタが20ピンになっているのが特徴だが、SP420-RPでもやはり20ピン。一般的なATXマザーボードでも利用可能と思われる。価格はコムサテライト3号店で2万1800円。
もうひとつは、「Tiger MP/MPX」の登場により、コンシューマ市場ではほとんど見かけなくなったThunder K7用電源「HP2-6460P」。台湾KeyWin製で、海外ではThunder K7の登場にあわせて1年ほど前から流通していたようだ。なぜ今頃? とい気がしないでもないが、独自規格の電源を採用するThunder K7のユーザーにとって、予備として確保できる電源が単品販売されるのは嬉しいことだろう。こちらも扱いはコムサテライト3号店で、価格は24800円。
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