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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第36回

Wikipediaケータイで叡智に触れる

2008年08月28日 10時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ケータイで知の連なりを感じる未来

「情報と文化」

「情報と文化」

 しかし、ケータイ検索は、一面的なものに留まらない。より豊かな知の情報収集を行なえる可能性を秘めている。

 僕の大好きな本に、「情報と文化」(松岡正剛、戸田ツトム構成、情報文化研究フォーラム編、NTT出版)がある。情報、システム、経済、文化、多様性といった5つの章立ての中に、たくさん魅力的なストーリーが詰め込まれている。僕が気に入っている最大の理由は、この本の編集にある。

 本を開くと、普通の本とはまったく違うことに気づく。本文は紙面の中央にこじんまりとケイで囲われていて、その欄外に本文に関連する資料や参考情報がびっしりと詰め込まれている。本文を読み進めていくだけで、あたかも百科事典や辞書で調べながら読んでいるように、深く理解することができる。

「情報と文化」

「情報と文化」は本文の周りを写真や解説が囲んでいる

 まだハイパーリンクが入れられるウェブページがない1986年が初版ながら、情報を深く理解していくにはどのような編集が必要で、それをいかに紙の上に再現するか、というアイデアが詰め込まれているように思える。ここにヒントがある。

 Wikipediaは、文中の言葉に大量のリンクが張られており、クリックするとその言葉の意味を知ることができる。すなわち情報と情報を連結し、それ同士の間を自由に行き来できる状態になっている。

 「情報と文化」のようにWikipediaにメインストーリーがあるわけではないが、この本の編集でやろうとしていることを、パソコンでもケータイでも手軽に利用できる。

 だとしたら、自分が生活の中で、どんなキーワードに触れて、それを調べたのか。そういう行動の結果から、いったい何を追いかけているのかを知る手段として、検索履歴を活用できないだろうか。

 せっかくWikipediaをケータイというパーソナルな端末で利用できるのだ。923SHは辞書機能からの検索履歴データをいつでも確認できるようにしてほしかった(検索履歴を参照する機能はない)。

 これを参照できれば、自分が最近どんな言葉が気になっているのか、どこに興味が向いているのかを俯瞰できる。

 共通する概念だったり、同様のキーワード群を検索しているほかのユーザーとのマッチングもできるだろう。自分の興味あるテーマを、より深く知っていくことは、情報に対してよりリッチな生活をもたらしてくれるのではないだろうか。

 この仕掛けは、きっと人間の気付きや興味を無駄にせずに連結してくれる。それが手のひらで起きれば、とてもわくわくする未来が待っていると思うのである。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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