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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第36回

Wikipediaケータイで叡智に触れる

2008年08月28日 10時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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メディアと連動するパラシュート型知識

 ただし、ケータイで手軽に検索をかけるときにもの足りない点がある。それは一面的な知の取得になりがちなことだ。

 僕自身、最近はあまりテレビを見ていない。しかしiGoogleのガジェットの1つである「Google急上昇ワード」を眺めていると、今テレビを始めとしたメディアで何が話題なのか、どんなタレントが出てきたのか、何となく見えてくる。

刻一刻と変化する「Google急上昇ワード」。最新(左)と1週間前(右)では登場する芸能人の名前も大幅に変化する

 テレビで芸能人の変身写真の特集が行なわれていれば「奇跡の一枚」というキーワードが出てくるし、「樹海」や「生き霊」というキーワードが登場すれば、怖い話の番組が放送されていたことが分かる。

 テレビの内容を検索キーワードとして入力する、そんなテレビの前での検索の様子がちらちらと透けて見えてくるのである。

 テレビは見ている人が多いので急上昇ワードに反応するほどの検索クエリー数が出てくるのだろう。もちろん、検索キーワードのネタ元は、決してテレビでなくてもよい。

 友人と話している会話であったり、電車に乗っているときに見かけた中吊り、街で見かけた気になるお店やブランドなど、生活の中から疑問や調べたいことなどをつむぎ出す。そしてケータイでその答えをすぐに見付けて知ろうとする。

 知的好奇心をその場ですぐに満たしてくれることはいい。一方で、ケータイ検索によって知ることができる知識は、体系的な理解まで深めることが難しいかもしれない。

 気象のように複雑な現象や、事件などの歴史的背景が重要な意味を持つものについては、キーワードをめがけてパラシュート型で知識を得ようとしても、非常に一面的な断片情報で終わってしまう可能性がある。好奇心が不完全燃焼の状態で終わるのは、なんだかもったいないという感覚を持ってしまう。

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