自動車文化を悪者にせずに「気持いい技術革新」を学び「気持ちいい走り」を楽しむ中で「気持ちいいライフスタイル」を提案するクルマ雑誌「ECOMO」が5月30日に創刊された。そこで、ECOMO編集部さんを騙くらかし「走りという選択肢もアリ!?」という記事の撮影現場に潜入!(ホントはECOMO編集部さんのご厚意です)だが、それだけで何もしないのはネタ帳編集部の沽券にかかわる! ネタがないかと周りを見回すと……この記事のために集められたクルマって、よく見たら「2ペダルなのにマニュアル」という新型ミッションで話題になったモデルばかりじゃないかッ! グランツーリスモをはじめとするレースゲームは基本的にクラッチレス。だったら、その仕組みを知ればゲームでも活用できる!(かも)。ということで、ECOMOさんの企画のために用意されたクルマの(GT-Rのみ例外)新世代ミッションに着目し、その解説を自動車ライターの真鍋氏にちゃっかりお願いすることにした。
これからのスタンダード「2ペダルMT」
最近のクルマの傾向は、クラッチペダルレスのマニュアルミッションやステアリングにパドルシフトを搭載するモデルなど、スポーツドライビングを気軽に楽しめる最新技術が数多く採用されています。スポーツドライビングはマニュアルミッションだけ、という概念が変わってきているともいえるでしょう。
近頃のスポーツモデルで見かけるようになった2ペダルマニュアル(クラッチペダルレス)。レースシーンでは、かなり前から採用されており、さまざまな利点があります。ひとつにドライバーがシフトチェンジするよりもコンピュータ制御とすることで、シフトチェンジのタイムラグをなくすことが挙げられます。また、クラッチペダルの操作がなくなることによって、ドライビングにより集中できるようになります。
この技術を一般化したのが、デュアルクラッチミッションなどと呼ばれるシステムです。各メーカーにより名称は異なりますが、クラッチペダル操作のいらないマニュアルミッションなのです。シフトチェンジは前述のとおり、クラッチペダル操作のあるミッションよりも断然速く、クラッチ操作を電子制御しているので、AT限定の免許でも運転することができます。このユニットの登場により、ドライブトレインの選択肢が広がってきているのが現状です。
では、今までのATとどこが違うのでしょうか。これまでのATはトルコン(トルクコンバーター)と呼ばれる方式が一般的。トルコンは、エンジンの回転をミッションに伝達するクラッチの役目を持っています。伝達にはATフルードを介しているので、マニュアルミッション(MT)のようにギアが直結していないため伝達効率が悪くなってしまい、フィーリングもMTに比べてダイレクト感に欠けてしまいます。一方のデュアルクラッチミッションは、名前の通り、2つのクラッチを持ち合わせたミッション。タイプにもよりますが、リバース、1、3、5速をひとつのクラッチで制御、もうひとつが、2、4、6速を制御。そのため、あらかじめ次のギアをセットできるためにシフトチェンジのタイムラグを軽減することができます。クラッチペダルレスにできるのは、ギアのセレクトを油圧アクチュエーターで制御しているからなのです。
2ペダルマニュアルをいち早く市販車に導入したのが、フォルクスワーゲンやアウディが採用しているDSG(Direct Shift Gearbox)と呼ばれるミッションで、現在では両社のラインナップするほとんどのモデルで選択できるほど一般化しました。また、昨年リリースされた、国産スポーツ系車種にも2ペダルマニュアルは積極的に採用されました。
一大センセーショナルを巻き起こした日産「GT-R」(R35型)。プラットフォーム、エンジン、ミッションなど大幅にリニューアルして登場した三菱「ランサーエボリューションX」。BMWのスポーツグレード「M」を彷彿とさせるチューニングを施した、レクサス「IS-F」がその代表といえます。ただし、「IS-F」は厳密には前述の2台と異なり、トルコン式ATなので2ペダルマニュアルとは呼べませんが、ツインクラッチモデルと同等のスポーツミッションが採用されています。
一概に2ペダルマニュアルといっても、各メーカーにより使われる技術や特徴が異なってくるので、ここではこの3台に搭載されたミッションを比較して、それぞれの利点や優位性を考えてみましょう。