企業内データを分析・加工し、意思決定支援に繋げるアプリケーション「BI(Business Intelligence)」。2007年は大手ITベンダーがこぞって、このBIに触手をのばした。オラクルがハイペリオンを、SAPがビジネスオブジェクツを、IBMがコグノスを傘下に。また、マイクロソフトも「BI宣言」を発表するなど、大手ITベンダーの主要アプリケーションの1つとして、BIは欠かせないものになっている。しかし、ユーザーサイドにおいては、日本のビジネスシーンにおけるBIへの浸透度はまだ高いとはいえない。2008年はBI市場にどのような新しい動きが生まれるのか。ガートナージャパンの堀内秀明氏に聞く。
米国のCIOが高い関心を持つBI
――2007年のBI(Business Intelligence)市場を振り返ってみていかがですか。
堀内氏:2007年は大手ITベンダーによるBIベンダーの買収が相次ぎました。ビジネスオブジェクツやハイペリオンなど国内のBI市場でも上位に位置する主要なBIベンダーが買収されたため、市場に与えるインパクトは非常に大きいものでした。
ここ数年、米国の多くのCIOは最も重要だと考えるIT課題の筆頭としてBIの名前を挙げます。世界的なITベンダーにとって、このように注目されているアプリケーションの領域で負けるわけにはいきません。だからこそ、彼らはこぞって、BIベンダーを買収したのです。
――大手による再編でBI市場に何が起こるのでしょうか?
堀内氏:BIを入手したITベンダーも、買収すれば終わりではなく、次の一手を考えなければなりません。OLAP(オンライン分析処理)やアドホック・クエリ(非定型検索)、Excelとの連携機能、Webブラウザで使用できるといった中心機能は主要なベンダーの製品には搭載されており、コモディティー化が進んでいます。今後はこのような主要機能を一通り揃えているだけでは価格競争になってしまうことが必至の状況です。BIをより包括的なソリューションの一部として提供するといった、いままで以上の新しい何かがベンダーに求められることになるでしょう。
CPMこそがBIに求められる役割
――海外ではBIのどういった側面が重視されているのですか?
堀内氏:2007年に買収されたBIベンダーは、実はCPM(企業パフォーマンス管理)を得意とする企業ばかりです。CPMとは企業の売上や財務データなどを収集、分析して経営意思決定の材料とし、経営課題の解決に繋げるマネジメント手法です。
BIツールはCPMを実現するために必須であると言えます。業務システムに集められた様々なデータの掘り下げ分析や、企業全体のパフォーマンスのサマリーをレポーティングするダッシュボード機能などが必要とされる代表的なBIの機能です。CPMではBIを使って特に経営に関する数値を「見える化」することが目的になります。経営者はCPMを通じて、何らかの問題があれば、早期に対策を講じ、経営上の失策を防止することができるからです。
本来このような業務はERPで実現可能と考えられてきたことですが、複数の基幹システムが共存する現実世界の課題を解決するにあたりCPMが注目されているともいえますね。