マイクロソフトの市場参入やSAPの「SAP Business All-in-One」刷新など、外資の動きが活発だった2007年の中堅・中小企業向けERPパッケージ市場。「日本版SOX法」に伴う内部統制やコンプライアンス対応などを背景に、商機拡大を狙うベンダーの動きも加速した。ERP市場におけるSMBユーザー企業の最新動向と2008年以降の市場展開について、中堅・中小企業のIT市場専門調査会社、ノークリサーチ 研究員の河田裕司氏に聞いた。
中堅・中小企業向けのERP市場を外資系ベンダーが狙う
――2007年の中堅・中小企業向けのERP市場を振り返ってみていかがでしたか?
河田氏:従来、中堅・中小企業向けのERP市場は下記の図のように富士通やオービック、大塚商会といった国産ベンダーが強い市場でした。しかし、2007年はSAPやマイクロソフトなどの外資系ベンダーが新たな製品投入を行ない、この市場へ本格的に参入してきました。
――今後、市場での外資系ベンダーの存在感が増していくのでしょうか?
河田氏:SAPに関して言えば、その可能性は大いにあると思います。SAPは2007年6月に中堅企業向けERPパッケージ「SAP Business All-in-One(以下、All-in-One)」を刷新しました。これまで曖昧だった製品のターゲットを明確に中堅企業に定め、導入期間で6カ月以内、費用で1億円と製品の性格を分かりやすく打ち出しています。また、さまざまな業種や業態に強いパートナーを新たに募って、ユーザーの要望にキメ細かく対応する姿勢を打ち出しました。
国内のSIerは「大企業にはSAP、中堅中小には国産ベンダー」といった形でERP製品を提案することが多いようですが、今後、中堅中小企業にもAll-in-OneなどのSAP製品を提案するSIerが増えてくるでしょう。数年後には国産ベンダーの脅威となる可能性を秘めています。
――これまで国産ベンダーの製品を使ってきた中堅・中小のユーザー企業は外資系ベンダーをどう迎えるのでしょうか?
河田氏:外資だからという理由で使いたくないと思うユーザーは少ないでしょう。ERPは基幹システムとして安定性やサポート体制などが重要な部分ですが、ある程度の製品になれば機能格差はそれほどありません。ユーザーがERP導入時に、まず最初に考えるのは価格です。高いと思われているSAPが低価格で販売すれば、中堅・中小企業のユーザーにも受け入れられるでしょう。
マーケットが細分化されている中堅・中小企業のERP市場
――2007年に話題となったITのテーマの1つに「日本版SOX法」があります。中堅・中小企業のERP市場に内部統制は何か影響があったのでしょうか?
河田氏:中堅・中小企業のERP市場について言えば、内部統制は「特需」と言うほどではありませんでしたね。日本版SOX法が上場企業を対象にしていることもあり、私どもが実施したアンケートでは「自分たちに関係がない」と思っている企業がほとんどでした。「法整備が確定してから、システムのリプレイスを行なう」とユーザー企業に言われて、むしろ弊害になったケースもあったみたいですよ(笑)。
――内部統制による大きな影響はなかったということですが、2007年の市場環境はいかがでしたか?
河田氏:中堅・中小企業の全体的な傾向として、単体業務システムからERPパッケージにリプレイスする企業が増えているため、市場は拡大傾向にあります。
私どもの調査によると、2007年度は市場規模が約785億円、対前年比8.7%の増加となる見込みです。2008年も約10%の成長を見込んでいますし、2010年には1000億円を超えるまでに成長すると思われます。
――では、中堅・中小企業のERP市場は当面順調に推移すると考えていいのでしょうか?
河田氏:そうですね。ただ、市場を細かく分析するともっと面白い状況が見えてきます。中堅・中小企業と一口に言いますが、年商5億円の中小企業と500億円の中堅企業では、ERPに関して求めているものがまったく違います。下記の表のように市場を分類すると、企業規模によってERPパッケージのシェアが違っていることがわかります。