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「BIはアプリケーションの一部となりユーザーの業務に溶け込む」――ガートナーの堀内秀明氏

2008年01月04日 00時00分更新

文● 大川 淳、アスキービジネス編集部

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ABO新春企画2008 SaaS ERP

――日本では、CPM以前にBIそのものに対しての認識が低いと言われています。

堀内氏:確かにアンケートで見てみると、「高いBIはいらない。Excelで十分」との声がありますが、それは誤解です。確かにExcelを使えば、BIで作成したものと同じ様な資料を作成できますが、その資料が経営判断に利用できるとは限りません。たとえば、一口に売上げや利益といっても、どこまでの範囲を含むのか明確な基準がなく、作成者の意図や認識によってバラバラになってしまいます。また、手軽に使えるツールではあるものの、資料の作成に多大な労力と時間がかかるという声をいたるところで耳にします。

 このような課題から想像できるかもしれませんが、経営に関わるデータを集中管理し、全社的に統一された視点で経営指標をレポートするということが重要です。その結果、正しいレポートを元に正しい経営判断が下せるのです。Excelが悪いというわけではありませんが、必要以上にデータの加工や検証に現場ユーザーが手間隙をかけてしまっているケースがあるはずで、そういったことに気づいている企業が日本でも徐々に増えています。

――企業のBIに対する意識に、変化の兆しが見られるということですか?

堀内氏:企業の大小を問わず、これまで以上に競争が激しくなってきており、環境変化に応じた迅速な意思決定が求められています。そのためには、企業全体の正しい経営判断を行なうシステムとスキルが必要です。このように考える企業は増えており、BIに関しての関心は高まっています。

 下記の図のように、我々の調査によるとBI導入企業の利用目的として、「利益管理」や「予算管理」「財務分析」は上位に上がってきます。これらは使用目的から考えれば一種のCPMと言えるものですし、CPMそのものの潜在的なニーズとして捉えることもできます。CPMの認知度はまだまだですが、それを目指してBIを導入する企業が日本でも今後増えていくのではないでしょうか。

国内のBIソリューション/ツールの利用分野

国内のBIソリューション/ツールの利用分野(画像クリックで拡大)

――ユーザー企業が今後必要とするBIはどのようなものでしょうか?

堀内氏:我々の調査によると、企業のBI利用における課題として「ユーザーのスキル不足」「費用対効果が不明確」といったことが挙げられます。いくらBIを導入しても、使い方が難しく、ユーザーに利用されなければ費用対効果が上がるわけがありません。つまり、国内のエンドユーザーはBIに対して「使いやすさ」を求めています。「パッと押すとパッと出る」といった、1クリックだけで必要なデータや情報がすぐに取り出せるようなシンプルな使い方ができるBIアプリケーションにニーズがあると思います。

――ユーザビリティの向上が最大の課題ということでしょうか?

堀内氏:そう単純な話ではありません、むしろ、操作を簡単にする以上の発展が期待されていると言えるでしょう。オラクルやマイクロソフトにとって、BIは自社の製品ラインナップの1部にすぎません。そこで彼らは他の製品と組み合わせてBIを提供することを考えています。既にマイクロソフトは「Microsoft SQL Server」に、オラクルは「Oracle Fusion Middleware」にBI機能を組み込んでいます。このように他の製品の1機能として組み込まれるBIが増えれば、日々の業務を行う上で、ユーザーが気づかない間にBIを利用していたというシチュエーションも起きてくるでしょう。その結果、ユーザーは日常業務を通して、自然にBIの恩恵を享受できるようになっていくのではないでしょうか。

堀内秀明(Hideaki Horiuchi)


ガートナー ジャパン リサーチ アプリケーションズ マネージング バイス プレジデント。日本国内のデータベース・ソフトウェアなどのソフトウェア市場動向・将来予測・競合分析ならびに、ビジネス・インテリジェンス・システムの製品選定、システム導入に関するアドバイスを担当。現在は、日本におけるアプリケーション・グループの責任者も兼任している。ガートナー ジャパン入社以前は、国内大手SIベンダーにて10年間、製品調査、システム提案/構築ならびに技術支援に従事。

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