このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

IPv6に進路を取れ! 第1回

日本を代表するhackerが逝去

「IPv6」の守護者、萩野純一郎氏を振り返る──彼が残した最後の記事

2007年11月07日 21時08分更新

文● 白屋麻、編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 10月29日、インターネットの新しい通信基盤「IPv6」の普及に関わっていた天才エンジニア、萩野純一郎氏(通称「itojun」氏)が逝去され、7日に告別式が行なわれた(関連リンク)。享年37歳。まだまだ活躍の期待される年齢だっただけに、本当に惜しまれてならない。

 萩野氏が残した功績がいかに偉大だったか。彼が最後に弊社刊「ネットワークマガジン」に執筆した特集記事とともに振り返ってみよう。

荻野さん

2000年に開かれた「INET 2000-The Internet Global Summit」のパネルディスカッションに参加している萩野純一郎氏(一番右の人物)



「IPv6」の普及、啓発に尽力した

 

 itojun氏は「KAME」と呼ばれる、各種OSでIPv6を使用可能にする基盤ソフトウェアを作成するプロジェクトを先導していた。

 IETF(Internet Engineering Task Force)、IAB(Internet Architecture Board)といったインターネット技術の標準化に関する国際機関に加えて、WIDE(Widely Integrated Distributed Environments)など国内におけるインターネットの研究プロジェクトにも所属。「IPv6ネットワークプログラミング」(アスキー刊)なども著述し、IPv6の普及、啓蒙活動にも幅広く活躍していた。

 現在、KAMEはFreeBSDやNetBSD、OpenBSDといったフリーのOSに組み込まれ、商用/非商用を問わずインターネットのサーバーやネットワーク機器で動作している。

 ちなみにIPv6の身近な採用例は「Mac OS X」だ。Mac OS XではデフォルトでIPv6が有効になっており、「Bonjour」というネットワーク技術を通じてIPv6は自動的に利用されている。Macユーザーであれば、それと気がつかないままIPv6を体験している人も多いだろう。

 IPv6だけではない、先に挙げたBSDやMac、それ以外にもセキュリティ方面など、itojun氏の業績は数限りない。あまりの多才さに驚いた彼を賞賛して、FreeBSDプロジェクトのWarner Losh氏は「Itojun-san of the Kame project in Japan seems to be six different people inhabiting one body」(身はひとつだが、実体は6人いるようだ)とまで述べている(関連リンク)。業績の質、量ともに、すばらしい「hacker」だったのだ。

 IPv6が普及した未来、それはあらゆる機器がインテリジェント化され、有線/無線でさまざまな情報をやり取りできる時代となるはず。そうなったときに我々の生活がどれだけ素晴らしいものになるのか想像はつかない。しかし、その礎石には間違いなくitojun氏の名が刻まれるだろう。

 ただ、今はプログラマーの一人としてitojun氏の功績を讃え、心からのご冥福をお祈りしたい。

 

(次ページに続く)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  3. 3位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

  6. 6位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    データセンター

    液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

  9. 9位

    TECH

    業界横断で“サイバー攻撃から供給網を死守” NTT・アサヒ・トライアルらが「流通ISAC」始動

  10. 10位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

集計期間:
2026年04月08日~2026年04月14日
  • 角川アスキー総合研究所