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使えばわかる!IPv6入門 第2回

リンクローカルアドレス、グローバルアドレスの違いや設定方法とは?

IPv6を使ったLANを試してみよう

2011年05月31日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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 前回はIPv6アドレスの基本フォーマットの紹介、WindowsでのIPv6の利用方法などを紹介した。続いては、LAN内でIPv6の通信を行なってみる。また、プラグ&プレイでIPv6アドレスが自動的に設定されることを確認しよう。

最小構成のLANを構築する

 別のPCとIPv6で通信を行なうために、図1のような最小規模のネットワークを構築する。ここでは便宜上、1台はWindows 7、もう1台はWindows XPとした。しかし、Windows Vistaが混ざっていたり、あるいは両方がWindows 7でも問題はない。また、IPv6はIPv4と共存できるよう設計されているので、それぞれのPCでIPv4が動いていても問題はない。とにかく、2台ともにIPv6を有効にして、それぞれのPCでipconfigを実行して、IPv6アドレスが割り当てられていることを確認しよう。

図1 最小構成のLANをつくる

pingで導通を確認する

 どちらのPCにもリンクローカルアドレスが設定されていることを確認したら、導通確認を行なう。今回の環境では、PC1(Windows 7)から以下のコマンドを実行する。

ping fe80::20b:97ff:fe2e:1f58%11

 対象となるPCのIPv6アドレスをリンクローカルアドレスで記述した場合は、パケットを送り出すLANインターフェイスを、スコープIDまたはアドレスで指定する。ここでは、スコープIDを利用している。スコープIDは、pingを実行するPCのEthernetアダプタに割り当てられたインターフェイスインデックス(ここでは“11”)である。アドレスとスコープIDは“%”で連結する。IPv6が正常に通じていれば、コマンドの結果は画面1のようになる。

画面1 PC1(Windows 7)からのpingの結果

netshコマンドで詳細を確認する

 WindowsでIPv6を操作するには、netshコマンドを使う(画面2)。netshを起動し(1行目)、interface ipv6コンテキストに移動すれば(2行目)、ipv6の操作をすべて行なえる。ここでは、PC1のインターフェイス8(Ethernetアダプタ)の近隣ノードキャッシュ情報を表示させてみた(3行目)。

画面2 netshで近隣ノードキャッシュ情報を表示する

 netshは、XP以降のWindowsが搭載するネットワーク機能のほとんどを操作可能なコマンドである。IPv6プロトコルの操作にも対応しており、「interface ipv6」コンテキストから行なう(表1)。なお、Windows XPにあった、「install」と「uninstall」、「renew」はVista以降で廃止された。Vistaや7では、IPv6の停止はできるが、削除はできないのだ。

表1 netshで使える主なipv6関係のコマンド(netsh interface ipv6コンテキストのコマンド)

 さて、画面2の説明に戻ろう。show neighborsコマンドは近隣ノードキャッシュの内容を表示する。近隣ノードキャッシュはIPv4のarpテーブルに相当し、直近にIPv6で通信したホストのIPv6アドレスとMACアドレスの対応リストである。リストのトップにあるのは、PC2(Windows XP)のリンクローカルアドレスとMACアドレスだ(画面2-①)。その下は、近隣探索に用いられるマルチキャストアドレスの情報だ。ここまで確認できれば、この小さなIPv6ネットワークは正常に動いている。

自動構成の仕組み(その1)

 導通を確認したところで、ここまでの作業を振り返ってみよう。Windows 7は初期状態のまま、Windows XPもIPv6を導入しただけの状態でスイッチにつないでいる。すると、DHCPサーバがなく、アドレスの設定作業もしていないのに、2台のPC間で通信ができている。この仕組みは以下の通りだ(図2)。

図2 リンクローカルアドレスの自動設定

  • ①それぞれのPCは、LANインターフェイスが有効になる(スイッチとの物理リンクが確立する)と、リンクローカルアドレスを機械的に生成する。
  • ②生成したリンクローカルアドレスを、近隣要請メッセージに載せて送信する。このメッセージは同一リンク内(ブロードキャストの到達範囲内)のすべてのIPv6ホストに受信される。同じアドレスを使用しているホストがあれば、そのホストは近隣通知メッセージを発信し、アドレスが重複していることを警告する。
  • ③近隣通知メッセージが返ってこなければ、①で生成したリンクローカルアドレスがそのまま設定される。返ってきた場合はアドレスの設定に失敗する。

 ①では、各PCが自前でリンクローカルアドレスを生成している。EUI-64や乱数で生成されたインターフェイスIDを含むため、リンクローカルアドレスが重複する可能性はきわめて低いが、ゼロではない。そこで、②と③の処理により万が一の重複を防止している。ここで使われる近隣要請メッセージや近隣要請メッセージは、近隣探索プロトコル(NDP: Neighbor Discovery Protocol)の一部である。IPv6のアドレス設定にかかわるプラグ&プレイは、このNDPによって実現している。

(次ページ、「グローバルアドレスで通信する」に続く)


 

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