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FeliCaが生き残るとは限らない 日本のモバイル決済が変わる日 ― 第1回

「NFCの技術を取り入れたモバイル決済」のウラにあった歴史

2016年08月11日 17時00分更新

文● 鈴木淳也(Twitter:@j17sf

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NFCの故郷……ってどこでしょう?

5年で大きく変化したNFCの位置付け

 筆者が主たる取材対象を「NFC(Near Field Communication)」と「モバイル決済」に定め、本格的に取材活動を開始したのが2011年2月にスペインのバルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)でのこと。それからNFCと名のつく講演や展示会、そしてNFCの実験や事例があると聞けば世界中どこへでもひと足飛びで現地へと駆けつけ、その最新事情を探ってきた。

 それから5年以上が経過し、NFCを巡る事情もだいぶ変化した。“日本を除けば”世界中でまだ実験的なサービスがほとんどだった(NFCを使う)モバイル決済の世界に、Googleが鳴り物入りで「Google Wallet」を引っさげて参入してきた。当時、まだ欧州を中心とした携帯キャリアが細々と試行錯誤を続けていた世界にIT業界の巨人が登場したことは、こうした既存プレイヤーの間で大きな警戒感を生み、「Googleのビジネスを妨害する」という形で両者の戦いは進んだ。結果として、どちらのサービスも市場に花開くことはなく、一時期は「NFCは死んだ」(PayPal)と宣言されるまでの事態となり、筆者が参加するNFCに関する会議や講演会では一種の悲壮感のようなものさえ感じられた。

 だが現在、多くが知るようにNFCはメインストリームへと返り咲いた。

 Appleが「NFCの技術を取り入れたモバイル決済」の仕組みとしてiPhoneで標準利用可能な「Apple Pay」を発表したことが大きい。その後、Appleに続けとばかりにSamsungからは「Samsung Pay」、Googleは既存技術をリニューアルした「Android Pay」を発表するなど、まさに百花繚乱の時代へと突入した。一方で、こうした華やかな舞台の裏には、先人の苦労や人知れず消えていった技術も数多く存在する。本連載ではこうした“歴史”の部分にスポットを当て、読者の方々の記憶に留めてもらえればと思う。

12年でプレイヤーも変化する

 「NFC(Near Field Communication)」とは文字通り「近接通信」を意味するキーワードであり、おそらく比較的古い時代から存在していたと考える。筆者が関係者から聞く範囲では、近接無線を使った通信システムのアイデアはすでに古くからあり、企業や研究所の実験レベルではすでに1970年代ごろから本格化していたという。応用技術は1990年前後から市場投入されるようになり、2000年前後には香港でFeliCaをベースにした「八達通(Octopus)」や日本で同じく「Suica」などが実際に商用ベースで利用されるようになっている。

 だが「NFC」という規格の登場そのものは、2004年の「NFC Forum」設立を待たなければいけない(http://nfc-forum.org/newsroom/nokia-philips-and-sony-establish-the-near-field-communication-nfc-forum/)。2004年3月にドイツのハノーバーで開催されたCeBITで、Nokia、Philips、ソニーの3社によるNFC Forum設立が発表され、コンシューマ機器(携帯電話やPCなど)を使った近接通信技術による決済システムの標準化を目指した業界全体での動きが本格化することになった。

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