日本各地では何十年ぶりかという大雪が降るか降らないかで大騒ぎだった1月後半のとある土曜日。筆者はJR御殿場線に乗って沼津へ向かっていた。目的地はいまにも雪が降りださんといわんばかりの真冬の沼津港だ。なぜ、筆者が寒空の下を沼津港に向かっているのかといえば、そこが「NFC決済の聖地」だと聞いたからだ。
日本では10年以上にわたってインフラ整備が行なわれたこともあり、Suicaなど交通系ICカードをはじめとする「おサイフケータイ」が利用できる環境が街のあちこちに存在する。都市圏だけでなく、イオンなどの全国のショッピングモールや各地のコンビニなど、ポイント利用を目当てにタッチで「ピッ!」という光景はもはや珍しくない。一方で、Apple PayやAndroid Pay、Samsung Payなど、最近になり次々と登場しつつあるスマホを使った決済システムの基礎となっている「NFC(Type-A/B)」は、FeliCa技術をベースとした非接触決済インフラの整っている日本ではほとんど利用できない状況だ。
筆者が把握している範囲では、オリコが店舗カードの展開のために整備した決済端末を通じてMasterCardの「PayPass」が利用可能な舞浜の「イクスピアリ(IKSPIARI)」と桜木町の「コレットマーレ(Colette Mare)」や、現在では利用できないようだが家具チェーンの「イケア(IKEA)」がNFC決済の数少ない国内スポットとして知られている。
また、2014年にはジャックスと函館朝市まちづくりの会が共同で函館の朝市で「PayPass」とVisaの「payWave」が利用可能なインフラを整備して話題となった。函館に行く機会がなかったため、ずっと試せなかったのだが、2015年6月には三井住友カードやぬまづみなと商店街協同組合らが共同で、沼津港の商店街にこれらNFCの非接触支払いに対応した決済端末を整備し、夏以降に利用可能になったという話が飛び込んできた。夏以降は出張続きで時間が取れなかったのだが、1月後半のタイミングになってようやく3人のメンバーの予定があい「沼津にくりだそう」と相成ったわけだ。
ただ、そのまま沼津に行って帰ってくるだけではおもしろくないので、東京を起点に「沼津までスマホのタッチによる支払い以外の決済手段は禁止」という縛りをつけることにした。「縛りをつけてどういう意味が?」という疑問や顛末は、やはり今回の旅で一緒になった別の筆者による記事に任せるとして、本稿では沼津到着以降の現地のNFC決済事情について紹介したい。