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FeliCaが生き残るとは限らない 日本のモバイル決済が変わる日 ― 第13回

香港ではスマホさえあれば生活できるようになりつつある

2016年11月02日 17時00分更新

文● 鈴木淳也(Twitter:@j17sf

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 すでに日本の標準インフラとして日常生活に欠かせない存在となりつつあるFeliCa技術をベースとした非接触通信サービスだが、このFeliCaを採用して世界初の交通系サービスを開始したのが香港だ。この「八達通(Octopus)」は1997年に商用サービスを開始して以降、今日まで20年近くインフラが使われ続けている。都市国家である香港は人口密度が高く、毎朝の交通ラッシュも日本の大都市圏に負けず劣らずの規模だ。そしてこの過酷な状況に耐える仕組みに加え、ここ10年ほどは物販にもインフラが拡大され、コンビニやファーストフードでの買い物に気軽に活用できるようになっている。

香港のビクトリアピークからの眺望。変化し続けると同時に、変わらず活気のある街だ

 このように香港での主要インフラの地位を確立したFeliCaだが、一方で世界で広く利用されているType-A/B方式の決済システムも徐々に侵食が進んでおり、街には両者が混在している様子を見かける。FeliCaからType-A/Bにあるタイミングで完全に切り替えたシンガポールとは異なり、いまだ両者が共存しているのが香港の現状だ。今回はこの香港とFeliCaの最新動向について少し追いかけていこう。

NFC SIMとFeliCa

 香港の主要な生活インフラはFeliCa技術をベースに構築されていることは冒頭にも説明した通りだ。交通系や物販だけでなく、社員証や学生証など、身分証やゲート通過の“鍵”のような役割も含めて香港では浸透している。一方で、香港でのFeliCaの主役は相変わらずICカードで、日本では非接触ICカードサービスが普及を始めてからわずか数年でモバイル導入に至ったのに対し、香港では長らくICカードが使われ続けている。その明確な理由は不明だが、その理由の1つには“FeliCa”があると考えている。

 日本でのおサイフケータイ導入にあたっては、対応の各端末にFeliCaチップが内蔵されており、ここにセキュリティ的に保護されたカード情報(アプリ)を書き込み、アンテナを通してICカードと同様の動作(エミュレーション)を実現するよう実装されている。このように端末にセキュリティチップ(Secure Element:SE)を内蔵する方式を「eSE(Embedded SE)」と呼んでいるが、サービス用に専用端末を用意する必要があり、日本のように携帯キャリアが強いディレクションをもって端末開発を指揮しない限り、難しい方式でもある。端末メーカー主導でサービスを自ら始めようという動きもあったものの、以前の連載でも触れた「Goolge Wallet」のように(関連記事)、キャリア側の妨害によってサービス立ち上げを封じられることも少なくない。キャリア主導ではない決済サービスが端末メーカーから立ち上がるのは、2014年秋のApple Pay登場を待たなければならなかった。

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