子どもたちは、AIをどう使うべきなのだろうか。あるいは、使ってはいけないのだろうか。
こうした疑問に対して、政府がひとつの指針を示した。
文部科学省が2023年7月4日に発表したのは、『初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン』だ。
5月に検討を開始してから、約2ヵ月でガイドラインが公表されるのは異例の早さだ。
永岡桂子文部科学大臣は4日の記者会見で、異例の対応に理由について、こう述べている。
「夏休みの課題に不適切に活用されることを懸念する声があったこと、また学校現場における活用の適否の考え方をできるだけ早く示したいと考えた」
夏休みの宿題でChatGPTを使ってずるをする児童・生徒が出ないように先手を打ったということか。
ChatGPTは、学校の宿題でも使えそう
まず、チャットAI「ChatGPT」はすでに学校の宿題に使えるレベルに達しているのだろうか。
ChatGPTに「『エルマーのぼうけん』の読書感想文を書いて」と頼んでみると、以下のような回答が返ってきた。
「物語の展開も楽しく魅力的です。エルマーは、他の動物たちと一緒に冒険やお祭りに参加し、楽しい時間を過ごします。彼の明るいエネルギーと友情の絆は、読者の心を温かく包み込みます。さらに、物語の中にはユーモアや予期せぬ展開もあり、子供たちは飽きずに一緒に物語に引き込まれることでしょう(以下略)」
『エルマーのぼうけん』は、りゅうの子どもを助けるため、エルマーが冒険の旅に出かけるという内容の児童書だ。
出版元の福音館書店のウェブサイトによれば、読者として小学校低学年以上を推奨している。
小学校低学年の子どもたちが夏休みの課題に選ぶことを想定した場合、ChatGPTが書いた読書感想文は子どもの文章に見えない。
そこで、ChatGPTに「いまの文章を、小学校低学年の言葉遣いで書き直して」とあらためてお願いすると、今度は以下のような答えが戻ってきた。
「このお話では、友だちや思いやりの気持ちがとても大切だと教えられるんだ。エルマーはみんなとのかかわりを通じて、相手の気持ちを理解し合って、おたがいにたすけあうことのありがたさを学んでいくんだよ。だから、ほかの人とちがうところがあっても、おたがいを大切にすることが大事って気づけるんだ。(以下略)」
まだ大人が書いた文章のようだが、少し直せば、小学校低学年が書いた読書感想文を偽装できるかもしれない。
Bardも追随するレベルに
Googleが試験運用中のBardに同じお願いをした結果が以下の文章だ。
「エルマーは、お母さんに連れられて、りゅうの子を助けるために山へ行く冒険に出かけました。途中で、魔法使いや怪物たちに出会いましたが、エルマーは、勇気を出して戦い、りゅうの子を助けました。エルマーは、困難に立ち向かっても、諦めずに戦い続けました。その姿は、読者の心を勇気づけてくれました」
ChatGPTほどの完成度ではないが、こちらも言葉遣いなどを直せば、小学校低学年の読書感想文にも使えるかもしれない。
「AIは自分のためにならないと教えよう」
文部科学省のガイドラインは、夏休みの課題での生成AIの活用について「留意事項」を示している。
ガイドラインは、子どもたちに対しては「学びが得られず、自分のためにならないことを十分に指導する」とする。
そのうえで、課題について発表する機会を設け、提出された課題の内容を十分に理解し、自分のものになっているかなどを確認するといった対応策も例示している。
一方で、自分が書いたレポートなどに足りない視点を補うため、生成AIを活用するといった前向きな活用法も示している。
たしかに、次のような流れで活用するのであれば、より深い学習につながるのかもしれない。
1.まず自分で調べて書く
2.生成AIを使って調べる
3.生成AIの回答から、自分には欠けている視点に気づく
4.加筆・修正する
ファクトチェックの習慣づけ
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