「小さな力で大きなものを動かす」AI時代のコンサルティングの本質とプラットフォーム人材の要件
提供: 京都大学プラットフォーム学卓越大学院プログラム
総括:技術・ファイナンス・ルールメイキングを繋ぐ「プラットフォーム人材」へ
締めくくりとして、前田氏は現代のスタートアップやプラットフォーム構築において最も頻発している「悲劇」について語った。優れた最先端の技術を持った「技術者」だけで起業し、後から財務を統括する「ビジネス人材」を連れてくる、あるいはその逆の、2つのパターンについて、「この2つのパターンは、ほぼ100%の確率で、途中で両者の意見が合わなくなっていくことになります」と前田氏は指摘する。
原因はシンプルで、お互いの共通言語がないため「言葉が通じない」のである。技術者はファイナンスのロジックが理解できず、ファイナンス側は技術的な実装の難易度や本質的な価値が理解できない。
「この問題は、片方の人間がもう片方を外注(アウトソース)として扱っている限り、絶対に解決しません。プラットフォームを本気で成功させたいのであれば、自分が技術者であっても最低限のファイナンスを勉強し、自分がビジネス側であってもテクノロジーの構造を深く理解しなければならない。『両方の領域を自分の頭の中に越境させて持つこと』。これがスタートアップを成功させる唯一の道です」
社会へインパクトを与えるプラットフォームの構築には、以下の「3つの段階」を連続的にデザインしていく必要があると、前田氏は語った。
テクノロジー(技術の構築):他社が真似できないコアな価値を生み出す
マーケティング&ファイナンス(広め方と資金循環):いかにしてエコシステムを拡大し、お金を回すか
ルールメイキング(パブリックアフェアーズ):政府や社会の制度を味方につけ、デファクトスタンダード(事実上の標準)化する
また、セミナーの最後には本プログラムのコーディネーターの原田博司教授が以下のように本日の講義を総括した。
「今日のお話は、デジタル上のプラットフォームの議論とは少し異なり、『それらを作り、繋ぐためのプラットフォーム人材はどうあるべきか』という非常に新鮮な視点でした。コンサルティングファームという組織自体がひとつの巨大なプラットフォームであり、そこで活躍するプロフェッショナル一人ひとりもまた、異なる技術や組織を繋ぐ『接着剤=サブプラットフォーム』として機能しているのだということがよく分かりました。
プラットフォームを確立させるためには、単に優れた技術があるだけでは不可能です。本日お話があったように、それぞれの岐路でちゃんと意味付けを行い、決めたら自己暗示をかけて突き進むという強固なマインドセットが必要です。大学院で研究に励む皆様も、専門性を突き詰める論理的思考力をベースにしながら、フットワークを軽くして様々な現場に出向き、多様な要素を接着できる健やかな人材を目指していただきたいと思います」
テクノロジーの発展に伴い、これまで行われてきた業務が少しずつAIに代替されていくことで、コンサルタントに限らず人々の働き方は新たなステージへと進んでいくことは想像に難くない。しかし、その中で「専門的エッジ」や「クリエイティブな発想」を持ち、自分自身が様々な領域に接続するプラットフォーム人材になることこそが、AI時代の波を乗りこなしていく要件であると前田氏は語った。
「まずは隣の領域」、「興味がある全くの別分野」、そして今回の講演で度々登場した「ファイナンス」。一定の領域に閉じこもるのではなく、ほかの領域に一歩を踏み出していくことこそが将来的に自身の得意とする領域をさらに成長させる種になり得るのかもしれない。
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