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「小さな力で大きなものを動かす」AI時代のコンサルティングの本質とプラットフォーム人材の要件

連載
プラットフォーム学~先端事例から学ぶ、社会実装の現在点

提供: 京都大学プラットフォーム学卓越大学院プログラム

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コンサルティングの現場から学ぶ、企業の変革と再生

 新卒の会社でIT、業務改善コンサルティングを中心に活動した前田氏は、その後、M&Aや事業再生、不正調査のコンサルティングを経験し、様々な局面・シチュエーションに対し対応可能なコンサルタントとなった。

 このコンサルタントとしての知見は、現在前田氏が手掛けているスタートアップ支援や、自らの会社であるMEMSの経営にもダイレクトに生かされている。前田氏は、大学などでスタートアップ向けの講義を行う際、学生や若い起業家に対して必ず「会計(ファイナンス)は絶対に勉強してください」と強く伝えているという。

 例としてあげたのが、現在前田氏が支援しているテクノロジースタートアップの事例だ。その会社は社員数が20人弱で、メンバーの半数は現役の学生で構成されている。学生メンバーは、社会人メンバーと比してテクノロジーの技術力においては極めて優秀で、開発仕事も高いクオリティでこなすことができる。しかし、「ビジネスの仕草」については経験がない。

 具体的には、クライアントと「2年間で総額10億円」という大規模な開発契約を結ぶことになったとする。技術者としての彼らは「2年後に完成したら10億円をもらう」という思考に陥りがちだが、それでは2年間の開発期間中、メンバーの給料やオフィスの維持費をどうやって支払うのかという「資金繰り(キャッシュフロー)」の視点が抜け落ちてしまう。そこで、ファイナンスの知識があれば、契約時に「1ヶ月目から出来高に応じて、あるいは着手金として毎月一定額を分割で支払ってもらう」という契約交渉ができる。

 さらに、会社を運営する上でのリアルな数字の計算も必要だ。例えば、社員に毎月20万円の給料を支払う場合、社会保険料や福利厚生費(法定福利費など)として給料の約15%が上乗せされるため、会社としては115%にあたる23万円を最低でも確保しなければならない。さらに、PCの支給費用、オフィスの水道光熱費、地代家賃、通信費などが重なってくる。こうした「数字の裏付け」を理解して初めて、ビジネスを持続的に下支えすることが可能になるのである。

パブリックアフェアーズ:ルール形成がビジネスを支配する

 さらに前田氏は、コンサルティングの領域において近年重要性が増している「パブリックアフェアーズ(ルール形成戦略)」について言及した。これは、「政府のルールや規制、補助金の仕組みが変わると、マーケットと企業の運命がガラリと変わる」という現象を扱う。

 最も分かりやすい例が、自動車業界におけるEV(電気自動車)シフトの動向である。欧州や米国、中国などの政府が「EV導入に巨額の補助金を出す」「2030年代までにガソリン車の新車販売を禁止する」というルールを設定したことで、世界の自動車メーカーは一斉にEV開発へと巨額の投資をシフトさせた。日本国内でもEVシフトへのアクセルを踏み込んだ。

 しかし、風向きが変わり、欧州政府はEV化の目標時期の規制を一部緩和・延期し、米国でも政権の動向や政策の変更によってEVへの補助金を縮小・取りやめる動きが出た。中国市場でもEVの普及は進んだものの、リチウムイオンバッテリーの技術進化が消費者の期待に追いつかない部分があり、市場の成長は一時的に鈍化している。

 ルールが変わった瞬間、EVシフトを前提としていたビジネスプラットフォームは急ブレーキをかけられ、戦略の再転換を迫られることとなった。地政学的なリスクも含め、こうした「政府や国際情勢のルールメイキング」の動向をいち早く掴み、企業の経営陣に対して「次にどの方向に風が吹くのか」をアドバイスし、ビジネスの転換点を予測する役割が極めて重要になっている。

株式会社MEMSが目指す「知の触媒」と4つのコアサービス

 前職のコンサルティング会社を退職した前田氏が立ち上げた新しい会社が、「株式会社MEMS」である。

 前田氏は、特にコンサルタントとしてのサービスの在り方を明確に定義する。コンサルタントは本来普通の人が知らない高度な専門知識を有し、クライアントに対して新しい知見を提供するものである。

 しかし、前田氏はコンサルタントの大半がコモディティ化し、専門知識を有さない単なる人的支援となっている現状に対して、強い危機感を募らせる。

 「最近のコンサルタントでよくある勘違いは、事業の推進や、業務の改善を提案するのではなく、クライアントの指示通りに『綺麗な』パワーポイントのスライドを作り、クライアントが要望するものを提出することが仕事だと考えていることである。しかし、指示通りの『綺麗な』スライド作成や資料作成は、ChatGPTやClaudeといった生成AIと10分も会話をすれば、いまや誰でも簡単に、かつ高いクオリティで出力できてしまう」

 事実、MEMSの社内でもプレゼンテーション資料の作成においては、AIを活用しているという。さらに海外のコンサルティング業界では、AIの能力が並の新卒社員を遥かに凌駕しているため、すでに新卒の採用数を大幅に絞り込むファームが出始めているという。

 これからの時代、AIに駆逐されないコンサルタントであるためには、検索すれば分かる知識ではなく、クライアントの視点にたって、独自の「専門的エッジ」と、異なるナレッジ同士を組み合わせる「クリエイティブな発想」を持った「知の触媒」にならなければ、仕事として成立しなくなっていくのである。

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