「小さな力で大きなものを動かす」AI時代のコンサルティングの本質とプラットフォーム人材の要件
提供: 京都大学プラットフォーム学卓越大学院プログラム
【ディスカッション】原田博司教授と学生が切り込むAI時代の人材要件
講義の後半では、原田博司教授の進行のもと、会場に集まった学生たちとの間で非常に熱い質疑応答とディスカッションが行われた。
未経験の新卒をプロにする「人材育成のプラットフォーム」
学生A:未経験の新卒社員を、ファームはどのようにしてプロフェッショナルへと育成していくのでしょうか?
前田氏:各コンサルティングファームは、人材を高速で一人前にするための『人材育成のプラットフォーム(仕組み)』の構築に、もの凄くこだわっています。例えば、各社ともに独自のメソドロジーやKX(ナレッジエクスチェンジ)基盤を持ち、強固なプラットフォームの『型』が存在していました。
新人の仕事は、最初は『辞書引き』や『事例のリサーチ』から始まります。そうやって調べることを何度も繰り返していくうちに、ナレッジが自分自身の頭の中に蓄積され、自分なりのアウトプットが出せるようになっていく。それと同時に、クライアントの前に出てファシリテーションする実戦経験を積ませていく。ファームとしてこの仕組みを徹底的に作り込んでいるからこそ、未経験の若者を短期間で変貌させることができるのです。
日本のコンサル多すぎ問題とAIによる駆逐の可能性
学生B:日本はコンサルタントが多すぎると感じました。 今後AIが普及したとき、世界と比べて日本での需要はどう変化するのでしょうか?
前田氏:日本のコンサルタントの数が多い背景には、日本特有の『合議制(みんなで決める)』の経営スタイルがあります。経営会議で『これをやりましょう』と言ってもなかなか全員の合意が決断できない時、『コンサルファームがこういうデータを出し、こう提言しています』という外部からの第三者の資料があると意思決定がスムーズに通る。この意思決定の免罪符として使われている側面があり、その依存性の強さがコンサルタントの数が多い一要因として表れています。
では、今後はどうなるか。業務プロセスの効率化といった領域は、AIによって確実に代替され、人口は減っていくでしょう。しかし、進化していくテクノロジーの実装のための複雑なソースコードのチューニングができるITコンサルタント、社会実装のためのルールメイキングができる優秀なコンサルタントは、絶対に駆逐されずに残るでしょう。
コンサルティング業界で「出世する人」の共通点
学生D:ファームに入って出世する人、成果を上げて上にいく人にはどのような共通点がありますか?
前田氏:少し変わった視点からお話ししましょう。私は採用にも携わってきていて、応募者が受ける『性格テスト』のデータを分析したことがあるのですが、驚いたことに、最終的に合格した人たちのデータ波形を重ね合わせると、ほぼ全員が全く同じ波形を描いていたのです。
では、成功する人の特性とは何なのか。一番の要素は、『物怖じしないこと』、そして何より『緊張を楽しめる人』です。成功するコンサルタントは、ビジネスの厳しい交渉の場における『嫌な緊張』を、『楽しい緊張』へと脳内で変換するのが抜群に上手いのです。
もうひとつは、お客様の顔色を窺うイエスマンではなく、プロフェッショナルとして『それは間違っています』と正しく指摘し、議論を戦わせられる人。お客様に対して本質的な提案をスムーズに言える人の方が、圧倒的に高い信頼を勝ち取り、出世していきます。これは生まれ持った性格ではなく、後天的な『慣れ』によっていくらでも作れるスキルです。
博士人材・理系人材がコンサルティングで突き詰めるべきナレッジ
ディスカッションの最後には原田博司教授から多くの学生が気になるであろう問いが投げかけられた。
原田教授:「これからの時代、大学院の博士課程(ドクター)に進んでいるような、ひとつの専門性を極めた人材は、社会においてどのような価値を持つのでしょうか。
前田氏:「理系人材や博士人材の価値は、めちゃくちゃ高くなります。なぜならひとつの物事を、独自の仮説を立てて、理屈の裏付けを取りながら最後まで突き詰めて『博論(博士論文)』を書ききったという経験を持つ人は、新しい別の領域に飛び込んでも、全く同じプロセスで新しい知識を高速で積み重ね、プロフェッショナルになることができます。物事を構造化し、理論の裏にあるプラットフォームを見抜く力は、理系的なアプローチそのものです。
ただし、ひとつだけ注文をつけるとするならば、工学部、理学部、農学部、薬学部といった理系としてひとつの専門性を突き詰める中で、ほんの少しだけでいいから『経済やファイナンスの数字の感覚』を自分の中にカチッと組み込んでみてほしい。理系的な論理思考のベースの上に文系的なファイナンスの視点が乗ったことで、ビジネスの見える角度が劇的に広がります。その越境ができたとき、皆様はどこに行っても通用する最強のプラットフォーム人材になれるはずです。途中で投げ出さずに、ちゃんと博論を書ききってから来てください。
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