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研究力はあるが、世界企業になれない。StartX創業者が狙う、日本ディープテックの再設計

NEXUS ORCA創設メンバーに聞く、世界を狙う起業家コミュニティ構想

特集
エコシステムの潮流

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大学の研究室から“起業家の循環”を作る

 NEXUS ORCAでは、既存スタートアップの支援だけでなく、東京大学をはじめとする研究力の高い大学を起点にした起業家コミュニティ形成にも取り組む。 現在は、各大学内で学生ボランティアチームを編成し、若い研究者や学生が早い段階から起業家コミュニティへ接続できる仕組みづくりを進めている。

 スタンフォード大学でも、学生時代から起業家コミュニティへ触れることで、起業が「自然な選択肢」として根付いていたとTeitelman氏は言う。

 「学生たちを実際の起業家コミュニティに参加させることで、起業家が会社を作る過程を間近で見られるようになります」(Teitelman氏)

 特徴的なのは、「研究が完成してから事業化を考える」のではなく、研究初期から市場や顧客との接点を持つことを重視している点だ。研究のかなり早い段階から、「商業化をどう考えるべきか」「顧客とどう話すべきか」を考えるようになることが成長には必要だという。

 長坂氏も、日本では研究と事業化が分断されやすい構造があると指摘する。

 「これまでの日本では、『研究して論文を書いて、その後に事業化を考える』という流れが一般的でした。ただ、世界のトップエコシステムでは、研究初期から市場や顧客を見ることが当たり前になっています。特に国内では、『研究を短期的な市場ニーズに合わせて曲げる』という話に捉えられてしまいがちなのですが、研究や技術の価値が、どの課題において最も大きくなるのかを早い段階で理解するということが本質的な価値です。それがわかれば、研究開発の優先順位も、必要なチームも、知財戦略も、資金の使い方も変わってきます 」(長坂氏)

 さらに、卒業生が次の世代を支援する循環構造も重視している。支援を受けた起業家が将来コミュニティへ戻り、次の創業者を支える――そんな循環構造を日本に根付かせることもNEXUS ORCAが目指す姿だ。

「スタートアップだけでは変わらない」

NEXUS ORCAでは起業家を取り巻くイベントを開催して会員同士のネットワークを構築する

 「私たちが作ろうとしているのは、スタートアップだけのコミュニティではありません。大学、VC、大企業、研究機関、メディア、自治体など、さまざまな人たちが関わるコミュニティです」(Teitelman氏)

 Teitelman氏は、以前から日本へ足を運び、日本の研究者や起業家と交流してきたという。文化や食、人々への魅力に加え、日本のスタートアップエコシステムそのものにも強い関心を持っていた。

 日本で本格的に活動するきっかけの一つになったのが、日本の研究開発投資に関するデータだった。研究開発への投資規模が大きい一方、それが商業化へ十分につながっていない状況に強い関心を持ったという。

「多くの人から『日本では難しい』『不可能だ』と言われました。でも、私はそうは思わなかった。もし日本でそれを実現できれば、他の地域でも同じことができるはずです」(Teitelman氏)

 背景には、Teitelman氏自身がStartXを立ち上げた際の経験もある。当時のスタンフォードでも、「学生が起業する」という考え方は現在ほど一般的ではなく、周囲から強い反発も受けたという。

 長坂氏との出会いも大きかった。大学や研究人材を支援し、グローバルな起業家コミュニティを作ろうとする長坂氏の姿勢に共感し、日本で本格的にエコシステム構築へ取り組むことを決めたという。

 長坂氏は「これまで日本では、それぞれの組織や支援機関が個別に動いていた」と話す。

 「日本には、大学の研究力、企業の技術や事業基盤、VCの支援力、行政による施策など、すでに優れたアセットがあります。次に必要なのは、それらを世界市場への挑戦という共通の方向に向けてつなぎ、組織の枠を越えて人や知見が循環するコミュニティへ発展させることだと考えています 」(長坂氏)

 NEXUS ORCAでは、起業家支援だけでなく、メンター、投資家、業界専門家なども含めたネットワーク形成を進めている。現在は、コミュニティへ参加するメンターや専門家の募集も始まっている。

 インタビュー中、Teitelman氏は「日本には大きな可能性がある」と繰り返し語っていた。その可能性を引き出すために必要なのは、単発の支援施策ではなく、挑戦が継続的に生まれる土壌なのだろう。

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