インターフェイスの比較
乗った瞬間に実感できる2台の大きな違い
モデル YとID.4の最大の違いは、ユーザーインターフェースと言っても過言ではありません。
モデル Yは、テスラのほかのモデルと同様に、スイッチ類が非常に少ないのが特徴です。デザインもシンプルそのもの。まるでミニマリストの部屋をクルマにしたよう。操作系は、ステアリングとアクセル、ブレーキ、それに1つのステアリング裏のレバーという4種のみ。物理スイッチは、ステアリングのスポークにあるものと、頭上のルーフ部にあるハザードスイッチのみ。それ以外のオーディオやエアコンなどはすべてセンターディスプレーのタッチスイッチで操作します。
昨年のマイナーチェンジで、なんとシフトレバーでさえディスプレーでの操作に変えてしまいました。
また、イグニッションに該当するスタートスイッチやパーキングブレーキの操作は省略されています。クルマに乗り込んで、アクセルを踏むだけで、すぐに走り出します。ACCの操作も、ステアリングのスイッチを1回押すだけ。操作自体も簡略化されているのです。
その代わりに、ディスプレー内でできることは、非常に多彩です。クルマの設定だけでなく、エンターテイメント系のアプリもたくさん用意されています。走行中は、自車の周囲を走るほかのクルマや歩行者をディスプレーに表示します。ウインカーを操作すれば、曲がりたい方向の外の様子もディスプレーに表示されます。
つまり、モデル Yはクルマを運転するための操作系が斬新そのもの。このユーザーインターフェースの新しさが、テスラ車に共通する魅力と言えるでしょう。
一方、ID.4はどうかと言えば、かなりテスラを意識して、近づけていることがわかります。イグニッションのスタートスイッチとパーキングブレーキのスイッチを省略するなど、物理スイッチをなくして、ディスプレーでのタッチスイッチに移行しようという意思を感じます。とはいえ、ステアリングの左右にレバーがありますし、ライト系のスイッチも残されています。モデル Yほど、徹底的ではありません。
ただし、ID.4が間違っているとは言えません。クルマの操作系は、長い自動車の歴史の中で試行錯誤の末に最適化されたもの。使いやすく、安全性も考慮されています。斬新さや見た目の格好良さだけでは、モデル Yが勝っているかもしれませんが、オーソドックスなことが悪いわけではありません。
ID.4の操作系は、その伝統と革新のはざまで検討の末に作られています。正直、使いやすさで言えば、個人的にはID.4の方が好印象でした。
走りの違い
クルマとの一体感があって走りの楽しいID.4
動力性能が異なるだけでなく、乗り味も2台は異なります。速い遅いで言えばモデル Yが圧倒しますが、2台とも街中を常にビュンビュンと走らせるようなクルマではありません。ゆったりと電力を効率的に走らせるのが、スマートなEV乗りと言えるでしょう。しかし、試乗してみると意外と違いがありました。
まずモデル Yは、下から強いトルク感があって、それが速度を上げてもあまり変化がありません。一定のパワーが持続的に出ているようなフィーリングです。回生ブレーキの効き目も強く、いかにもモーターで走っている感があります。
一方、ID.4はパワーの伸びが気持ちいいのです。回生ブレーキは、基本的にかなり弱めの設定で、コースティング(惰性走行)を積極的に狙っているように感じます。ただし、速度調整がしにくいというもの正直なところ。ブレーキも踏み始めの効き目が弱いのも残念な部分です。
次に、ハンドリング面でも違いがありました。モデル Yは、ステアリングの操舵感が全体に重めで、路面からのフィードバックが希薄です。路面の凹凸は上手にいなして、乗り心地は良いのですが、クルマとドライバーの一体感がそれほどあるわけではありません。
それに対してID.4は、ステアリングのフリクション(摩擦感)が少なく、軽く、クリアな感覚です。路面のグリップ状況が、わかりやすく感じとれました。クルマとの一体感があって、運転が楽しいと感じることができるはずです。
パワートレインだけを見れば、いかにもEVらしいモデル Yの方が扱いやすいでしょう。ただし、ハンドリングではID.4に楽しさがありました。こうしたフィーリングの面では、やはり歴史あるVWの強みが活きるのです。
【まとめ】斬新さのモデル Yと
トラディショナルなID.4
いろいろと比較してみることで、それぞれの違いが浮かび上がってきます。モデル Yはユーザーインターフェースが斬新で、いかにもEVという走りが特徴です。ID.4は、歴史ある自動車メーカーが新しいことにチャレンジしたクルマと言えるでしょう。トレンドを取り入れつつも、基本の部分では歴史と経験を感じることができました。
新しさだけで言えば、モデル Yの圧勝です。実際のセールスが、それを裏付けていると言えます。ただし、クルマとしての基本の良さが、ID.4にあることは間違いありません。運転経験豊富な人が、先進と伝統のバランスを理解したうえで、ID.4を選ぶのではないでしょうか。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。

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