BYDとヒョンデのNEV(新エネルギー車)が日本に上陸し約3年。最初は正体がつかめないところがあったが、これらのクルマのほとんどを試乗するうちに、共通するものを感じたので紹介したい。
とにかく安い。不安になるくらい安い
BYDの「SEALION 7」を例にとると、ボディーサイズは全長4830×全幅1925×全高1620mm/車重2340kgと、日産アリアよりも大きいにも関わらず、さらにカタログ航続距離は590kmと日産アリアの470kmを上回る。さらに、SEALION 7の方が172万円も安い495万円だ(アリアは667万5900円~)。
韓国のヒョンデも同様だ。今年登場したインスターのプライスタグは284万9000円~357万円と、日産リーフよりも大幅に安価に設定されている。でありながら、航続距離は458kmと日産リーフと同等。価格で言えば、日産サクラはもう少し安価だけど、軽規格ゆえボディーを小さくせざるを得ず、結果として搭載バッテリー容量の小ささから航続距離は180kmに留まっている。
もちろん価格は安いほうがいいが、ここまで安いと逆に不安になってしまう。なぜなら日本には「安かろう悪かろう」という言葉があるから。だが試乗している最中に不具合が起きたことがあるのか? というと、そのようなことは一切なかった。
回生ブレーキやワンペダル動作といった、制御面での違いはメーカーによって成熟度の差があるものの、エンジン車やハイブリッド車と異なり、EVは自動車メーカーによるモーターやバッテリーの違いを認識しづらい傾向にあるので、よりいっそう安いと感じてしまう。
インフォテインメントが先進的
次に共通するのは、インフォテインメントの先進性だ。センターコンソールに設けられた高精細なタッチディスプレイで、車両のほとんどのことができる。ナビやエンターテインメントだけでなく、エアコンの設定、BYDに至っては窓やサンシェードもセンターディスプレイから操作できる。テスラやドイツのプレミアムブランドと同じことを彼らは標準搭載してくる。
ただ、エアコンの温度調整のたびに画面を表示したり操作するのは、ちょっと使いづらい。とくに走行中、助手席に座った人が操作をするとナビの画面が表示されない状態になる。そして、操作をしたあと、普段クルマを運転しない人ほど、ナビ画面に戻さない。これは運転する側はイラっとする。
操作しない状態が10秒続いたら前の画面に戻る、またはエアコンのみ物理ボタンを残すなど、強くUIの改善を望みたい。
先進性はメーターパネルにも表れている。ヒョンデはウインカーを出すとメーターパネルに後方画像が表示される。最初見たとき、こんな必要な情報をなんで誰も搭載しなかったのだろうと心底思った。
柔らかいのに硬い乗り味
BYDとヒョンデに共通するのは、安価な価格や先進のインフォテインメントだけではない。乗り味も共通している。ブレーキングすると予想以上にノーズダイブするのに対し、コーナーリングではロール量が少ない傾向がある。そして、荒れた路面や高速道路の段差で、ドライバーに強い衝撃を伝える。
この傾向はBYDの方が強いように感じた。ヒョンデは日本専用セッティングを採用していることもあってか、この傾向は最新モデルほど抑えられている。また、スポーツモデルのIONIQ 5Nは、この限りではない(かなり硬い足周り)。
思うに、中韓ではブレーキのたびに盛大にノーズダイブするくらい、柔らかい乗り味が好まれているのかもしれない。
輸入車なのにウインカーが右手側
輸入車なのに、ヒョンデやBYDともウインカーが国産車と同じ右手側にあることに驚いている。おそらく日本のためにちゃんとローカライズしているのだろう。ちなみに、ステアリングホイールに置かれたクルーズコントロールのスイッチは他の輸入車と同様に左手側にある。
開発スピードが驚くほど速い
驚くのは開発スピードの速さだ。試乗会などで「こうした方が好ましい」という話をすると、次のモデルでは改善していることが多い。PDCAサイクルで、欧州はDに、日本人はCに時間をかけるという話を聞くが、BYDとヒョンデはサイクルそのものがとにかく早いのだ。
日本メーカーがヒョンデやBYDに太刀打ちするには?
ヒョンデやBYDのクルマに乗るたびに、そして、新型モデルが出るたびに「日本の自動車メーカーは大丈夫か?」という記事が頭に浮かぶ。この手の記事にありがちな「日本メーカーはEV化が遅れている」という部分に疑問を覚える一方、同意するところも多い。
その昔、日本のテレビは世界を席巻していた。だが20年ほど前に韓国メーカーが登場した頃、価格で劣る国内メーカーは、クオリティーの高さや亀山モデルに代表される純国産品であることをアピールした。あれから時が経ち、売り場に行くとどうだろう? 国内メーカーの姿よりも韓国(中国)メーカーの方が売り場を占める割合が多く、そして驚きの低価格で売られている。
これは「テレビなんて、映っていればなんでもいい」という大多数の製品に大きな関心を持たないユーザーに対して、国産メーカーは自らの強みをアピールできなかった、その結果が現状だ。
同じことがクルマで起きるかはわからない。なぜならクルマは高額商品であり、長い時間使うものだから。それに数ある工業製品の中で「愛」がつくのはクルマだけ(愛車)。とはいえ、単なる高付加価値化だけでは、テレビと同じ運命が待っているだろう。それくらい、今、BYDとヒョンデは驚異の存在なのだ。
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