麻酔なしで痛みが弱まるならうれしい、VR新手法に期待
エンタメからビジネスまで幅広い分野で活用されているVRだが、大学や医療機関では痛みを緩和する研究も進められており、手術時にVRコンテンツを見せることで鎮静剤の量を半減できるという研究データもある。日本で同様の取り組みを進めているのが、ICTスタートアップリーグに採択されている株式会社xCuraだ。同社は催眠療法・認知行動療法等とVRを組み合わせた独自のコンテンツを開発し、麻酔や薬の効かない痛み・不安の軽減に取り組んでいる。
現在xCuraが注力しているのは、特定原因がないのに痛みが続く慢性疼痛だ。治療に神経ブロック注射を使う場合、人によっては強い痛みを感じてしまうが、VRコンテンツによって注射の痛みを緩和できるという。また、患者が自宅にVR機器を持ち帰り、リラクゼーション法や運動療法を続けることで痛みの改善にも取り組んでいる。
痛みを抑えるVRは、患者の心身の負担だけでなく、医療費の削減にもつながるだろう。問題は、VRゴーグルは視聴している本人にしか見えないため、その効果が伝わりにくいこと。今後は、クリニックやリハビリ施設などで多くの人に体験してもらうことで認知を広げていくという。医療としての認定を目指すには長い時間がかかるが、治療費の抑制や社会課題の解決につながるテーマは政府の助成金獲得などで有利に働きそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する成功哲学の研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、日本のスタートアップが成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みから成功哲学をピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
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