資金調達失敗あるある。ビジネスの「順番」は厳守すべし
スタートアップにとって資金調達は大きな課題のひとつ。投資家から資金を調達するためには、魅力的なチームやビジネスを組成し、プロトタイプなどで製品の価値を示す、といったいくつかの重要なステップがある。
あるディープテック・スタートアップは、長年の研究で得られたエビデンスを基に製品サンプルを完成させた。画期的な独自技術には高い競合優位性があり、性能も際立っている。「あとは広告費をかけて認知を広げれば売れる!」と意気込んで投資家を回ったが、結局VCから出資を取り付けることはできなかった。何がいけなかったのだろうか。
数多くの新規事業支援経験があり、ICTスタートアップリーグで支援を行っているデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の緒形昌輝氏は「資金調達が断られる理由のほとんどは、顧客獲得ができていないから。新規事業は、CPF(Customer Problem Fit:顧客課題検証)→PSF(Problem Solution Fit:課題解決策の検証)→SPF(Solution Product Fit:解決策の商品化検証)といった順番で進めるのが鉄則。早く製品化して売り上げを立てたい気持ちはわかりますが、順番を飛ばすのは逆効果です」と話す。最終的な収益を上げるまでに時間がかかるディープテックのようなケースであれば、現実的な目標とタイムラインを示すほうが、かえって投資家を説得しやすいとのこと。目先で収益化できなくても、事業目的やビジョンに共感してくれるVCとなら長期的な信頼関係を築けそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
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