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スタートアップの力を社会課題の解決とより良い地域づくりに活かすには

堺市「Sakai Next Impact Catapult キックオフイベント ~日本のラスト・フロンティアへ挑む『インパクトスタートアップ』の現在~」レポート

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市

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インパクトスタートアップの資金調達

 自分が自分らしくあることが重要なインパクトスタートアップにとって、外部からの影響を避けられないファイナンスには注意が必要になる。そこでパネラー3氏に自社のファイナンスで「こうしておけばよかった」等の経験があったか尋ねてみた。

小野:出資者とは対等な関係であろうとしている。我々も株主も同じ船に乗っていて、どちらかが偉いとかではない。一緒に環境負荷の低い農業を拡げようとしている、応援してもらっているという意識。

 弊社の株主は40社くらいいて、どこかが大きくリードを取っているわけではないのも特徴だと思う。みんながちょっと、ある意味で他人事になっていて、その分私がやりたいとおりのことをできている。これはシリーズAのときにVCの担当者から、あまりお金の匂いがしないから応援はしたいが大きなお金を入れることはできないと言われたところからきている。おかげで独立性を保つスタイルができている。

大津:売上が緩やかでも立ってきたところで、エクイティとデットの両方を組み合わせて資金調達している。テクノロジーの部分はエクイティで、労働集約でやっているところに関してはデットでやっている。

 最近インパクトファンドが増えてきていて、シリーズAでインパクト投資家にリードを取ってもらったが、やはり理解もあるし話も早い。やりやすかった。最初は誰が出したお金かをすごく考えたが、今は必要な時に必要な額を調達し、自分のやりたいスピードでやりたいことをやっていくことが大事だと思っている。

赤木:シードの時から今も、VCもCVCも担当者で決めた。特にCVCの担当者は変わってしまうことが良くあるので、長期にわたり一緒に戦ってくれますか?と確認をしている。あるVCの担当者はAgeWellJapanの応援団を組成すると言ってくれて、次に担いでくれるVCも紹介してくれた。

 どこに入れてもらうかというより、誰に入れてもらうかというところが大事。どんなサポートをお願いするのかも明確にしておいた方が良い。いろいろリクエストをしても結構大丈夫なんだなと感じた。

小野:ある程度長い期間での付き合いを考えたときに、最低限の流動性を確保しておくというか、いざというときに出て行ってもらえるのが望ましい。そのためには我々はこのジャンルのフロントランナーだと言い続けられるようにしておく、常に人気銘柄化しておくということが非常に大事だと思っている。

 VCは忙しい。当然、自分の事業分野については自分の方が詳しい。あの専門性の高い、何を聞いても明確な答えを返してくる小野君がこの分野で一押しは坂ノ途中だと言ってるし、まぁそうなんだろうなぁ。みたいな関係をつくっておくことで、まかせてもらう幅を広げていく。もちろん根拠になるようなトップラインを作っていく必要もあるが、やはり経営陣が最高な挑戦をしていると信じられることをし続けるというところが結局大事なのだと思う。

インパクトスタートアップの課題:採用

赤木:仲間集めの話が今日は出てきていないが、私は採用が調達と同じくらい大事だと思っている。坂ノ途中ではどうやっているのか。

小野:スタッフに関してはどの街にも良い人がいると思うが、経営レベルで物事を見れる人は東京に集まっているという問題がある。地方で起業する場合、これを乗り越えなきゃいけない。

 だからウチでは(メンバーの)住所は気にしないことにした。私以外の常勤の取締役は東京と千葉在住だし、社外取締役も東京にいる。執行役員も1人は大阪で、もう1人は東京にいる。経営体制をつくる試行錯誤の中で、住所と旅費交通費は気にしないことにした。

河合:インパクトスタートアップは社会に良いことをするというところがあるから、リクルーティングについては難易度が低いのではないかと思っている。しかし組織づくりには壁があるかもしれない。赤木さんの言う採用が難しいというのはどういったところなのか?

赤木:ウチはtoCのサービスが孫世代とシニア世代を扱っているから新聞やテレビなどのメディアへのウケが非常に良い。それをどんどん記事や番組で取り上げてもらうと、人材募集に応募は来る。しかし、ウチのビジョンに共感する優しくて良い人が、スタートアップのスピード感で寝ずに働くことができるかというと、そこは結構難しい。

小野:坂ノ途中は当初、資金調達などもせずにこじんまりと、ローカルビジネス、コミュニティビジネスのような感じでやってきた。そんな歴史的な経緯から牧歌的なところがある。心優しいメンバーが多い。だからもっと成長志向になろうぜというところでの苦労は絶えない。一方で、それはそんなに悪いことでもないように感じている。少しややこしい人が入っても、自浄作用が働いて出て行ってくれる。ある種の安定感があり、それが結果的に長期的な成長につながっているように思う。

河合:共感者がたくさん来ても、ではこの船を大きくしていこうとしたとき、そういう人材が本当にいるのか。そういう人を見定めるのが通常の会社に比べて難しいところは確かにあると思う。

パネルディスカッションの後には活発な質疑応答も行われた

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