すべてのクルマが自動運転になる未来。そのヒントは道路にある?
自動運転にはLiDARやカメラ、レーダーなど多数のセンサーが必要で、構築するシステムコストも含め安全性が高くなるほどコストがかかる。現在実用化されている自動運転レベル3(高速道路など特定条件下での自動運転)搭載車は数千万円するような高級車のみ。仮に軽自動車や原付などのマイクロモビリティにも自動運転機能を付けると、庶民の手には届かない価格になってしまうだろう。これに対して株式会社ハイパーデジタルツインが提唱するのは、道路などのインフラ側に自動運転機能をアウトソースして車両側のコストを下げる方法だ。デジタルツイン上の空間データと、道路に設置したセンサーの情報を組み合わせ、通行する車両を制御するという。同社はICTスタートアップリーグに採択されており、まずはシニアカーや搬送ロボットなど低速モビリティでの実用化に向けて、通信や処理の遅延を最小化する研究を進めている。
インターネットとクラウドサービスでのインフラの変化によって、スマホで各種サービスを体験できるのが当たり前になったように、自動運転のインフラが広がることで、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある。もちろん、外部データから安全な制御ができるのか、また道路に設置するための財源はどこから出すのかなど、できない理由はあるだろう。だが、これまでとは異なるアプローチで市場を拓くことも、スタートアップの役目となる。誰もが安くて安全なマイクロモビリティに乗れる未来の到来に期待したい。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/