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現場主義とソフトで進化 エレベーター移動できる自動遠隔ロボ「ugo」

ugo株式会社 代表取締役CEO 松井 健氏 インタビュー

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 最近では、さまざまな場所でロボットを目にすることが多くなった。家庭内で働く掃除ロボットをはじめ、ファミリーレストランの配膳、オフィスビルの中でも掃除や見回りを行うロボットを見かける。

 ugo株式会社は、業務用ロボット「ugo(ユーゴー)」をさまざまな現場に提供し、人手不足など課題解決に挑んでいる企業である。具体的には、警備やデータセンターの点検作業などにロボットを提供し、現場作業の改善を図っている。代表取締役CEOである松井健氏は、「机上での議論ではなく、現場での体験の積み重ねがビジネスを進める大きな力になった」と話す。大企業との連携や資金調達などが難しいとされるハードウェア、ロボットビジネスを進展させた要因はどこにあったのか、松井氏に話を聞いた。

 東京都千代田区、秋葉原からも近い場所にあるugoのオフィスの中には、たくさんのロボットが並ぶ。「ugo=ユーゴー」という社名は人間とロボットの「融合」を目指してつけられたものだ。

「社名と同じ、ugoというロボットを提供しています。このオフィスで、開発をはじめ、工場としてロボット製造も行っています」と笑顔でロボットを紹介するのは、創業メンバーであり、代表取締役CEOの松井健氏。

「ugoのメインの導入先は警備業界です。さまざまな業種で人員不足が大きな問題となっていますが、警備業界もそのひとつ。ロボットを導入することで人手不足を解消できると期待されています」(松井氏)

家事ロボットから警備用ロボットの開発に転換

 創業当時から警備業界など産業向けロボットビジネスをやろうとしていたわけではない。2018年の創業当時は、「家事代行のサービスをやろうとしていました。日本の生産性を上げるためには、家事労働が大きなハードルとなっているのではないか。家事労働を代行することで、日本が抱える社会課題の解決につながると考えたからでした」とロボットを家庭に導入することを目指していた。

ugo株式会社 代表取締役CEO 松井 健氏

 しかし、家庭へのロボット導入は容易ではない。まず、家庭で利用する際、掃除など特定用途に絞り込むならともかく、汎用的な用途で利用できるロボットを開発するためには、さまざまな動作や機能を盛り込む必要がある。例えば洗濯だけを考えても洗濯物を洗濯機に入れ、取り出し、干し、取り込むといった一連の作業があり、そのすべてに対応できるロボットとなると、ハードウェア的にもソフトウェア的にも多様な機能が必要になる。

 しかも利用する現場の状況は家庭によってまちまちで、利用環境が一定の工場とは異なる。洗濯という同じ作業をするにしても、広いスペースがある家庭もあれば、余分なスペースがない家庭もあるわけで、部屋の形や家具の配置も異なる。「どんな家庭でも利用できるロボット」を実現するのはそもそも難しいのではないか。

 そう質問すると松井氏は苦笑しながら、「はい、家事を代行するロボットを家庭に導入する事業を展開するのは簡単なことではありませんでした。創業から1、2年で行き詰まりました」と明らかにした。

 当時はビジネスの先行きを見込めず、「会社もつぶれかけるくらいの状況にまで追い込まれていた」という。そんなとき、「このロボットを警備に使うことはできないか?」という声が外部から寄せられた。「ビルメンテナンスをやっている企業をご紹介いただいたことがきっかけでした」。

 ビルのメンテナンスや警備にロボットを活用することには、すでに複数の企業が取り組んでいた。警備会社自身が取り組んでいるケースや、スタートアップ企業でこの分野に取り組んでいるケースもあった。そんな中、ugoのロボットが評価されたポイントは家事代行をすることを想定してつけた二本の腕だった。

「腕があることで、オフィス内の移動だけでなく、エレベーターのボタンを押して異なる階へと移動することもできるのではないかという声があがったのです」(松井氏)

家事代行を想定して付けた腕が活用の可能性を広げた

 多くの企業がロボットを活用した警備に取り組んではいたが、異なるフロアの移動に課題があった。オフィスビルの場合、人間は階段やエレベーターで容易に移動できるが、ロボットにはこれが簡単なことではない。同じフロアであれば問題なく移動し利用できても、複数のフロアにまたがる警備を行うロボットの開発は難しかった。

 そんな中、二本の腕を持っているugoであれば、ロボットがエレベーターのボタンを押して移動できるのではないかと、警備ビジネスへの活用提案があったのだ。

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