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保険を切り口に社会課題解決策を模索 三井住友海上がスタートアップと共創イベントを実施

「MSI スタートアップ・ギャザリング」レポート

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協業によって従来の発想やカルチャーではできなかったサービスが実現

「ドラレコ・ロードマネージャー」は、保険とセットで販売しているドラレコ型自動車保険のデータを使って実現したサービスだ。官民連携DXによるAI道路点検サービスとして、内閣府主催の第6回日本オープンイノベーション大賞で国土交通大臣賞を2024年2月に受賞している。

 アーバンエックステクノロジーズが三井住友海上と出会ったのは創業直後だったという。「道路の点検で走る黄色いパトロールカーが『RoadManager』を搭載したスマートフォンを装備して走れば点検が高度化してコストが下がる」と提案をしていた頃に三井住友海上と出会い、保険契約したドライブレコーダーが全国で数十万台規模あると知った。「そのドラレコでAIを動かせば黄色いパトロールカーでなくても街中の点検が勝手に集まる。そんな世界観から協業した」と前田氏は経緯を説明した。

 三井住友海上の大規模なアセットで通信機能付き専用ドライブレコーダーと、全国の支店を使った営業力、アーバンエックステクノロジーズのAI画像分析技術の知見を組み合わせたオープンイノベーションだ。

 三井住友海上の沼田氏は「アイデア自体は社内のアイデアコンテストから出てきた。従来の保険会社の発想やカルチャーでは実現できなかったサービスが世に出て、自治体に導入いただいた例だ」と補足した。

 ソラリスの梅田氏は、CVCの三井住友海上キャピタルが出資した2021年からの関係で、「若手を送り込んでいただいた。断トツにフットワークが軽い」と出向者の働きぶりを披露した。顧客の配管に関する困り事を話すと「それならここに持っていけるのでは」とすぐにアイデアを提案されたという。

 アーバンエックステクノロジーズの前田氏も「当社にも1人来ていただいている。あと10人お願いしたい(笑)」としたうえで、協業では全国のドライブレコーダーにソフトウェアをインストールしつつ通常機能を止めない検証で、膨大なチェックリストに驚いたという。「ドライブレコーダーの限られたハードウェアリソースで(ソフトウェアを)動かすなど、鍛えられた。会社と会社の取引で要求されるものすごいチェックリストは初めてで、力をつけさせていただいた」と振り返った。

 沼田氏は「保険会社は保険以外のビジネスをこれまであまりしてこなかったため、新規事業の経験値が少ない。新規事業を推進するスタートアップの熱意とカルチャーを当社に取り入れたい思いで(人を)出している」とした。

 大手企業と組むハードルについてソラリスの梅田氏は「保険会社は我々のロボットを完成品として期待している」とした。「2023年3月に東京都内で新しいオフィスを開業し、自動車整備工場に居抜きで入った。そこで日々実験して品質が上がっている。要求される品質になんとしても応えたい思いで投資に踏み切った」と述べた。

 ほかに大手企業と組むハードルとして、アーバンエックステクノロジーズの前田氏は「軽微なものではコミュニケーション。当初はメールでファイルのやり取りが大変だった。今は(ビジネス用チャットツールの)Slackを使い、(クラウドの)ドライブで共有してよくなった」と述べた。沼田氏は「Slackもちょっと前なら(社内で)考えられなかった。ツールも含めて伝統的な保険会社が変わっていくきっかけを与えてくれた」と話した。

 確実な事業立ち上げを目指す梅田氏は「ソフトロボットと言えばソラリスだと思ってもらえるようになりたい」としたうえで、会場の参加者に「いろいろなセンサーや特殊な清掃器具などアイデア次第で盛り込める。面白いアイデアがあれば気軽に連絡してほしい」と呼びかけた。

 アーバンエックステクノロジーズの前田氏は「2030年までにほとんどの街でアーバンエックステクノロジーズのソフトウェアを入れたい」とした。会場参加者には「都市インフラ管理のDX、老朽化で事業化を考えていたらお声がけを」と話した。

 沼田氏は「ソラリスは配管の点検で保険金の支払い対象となる事故を予見・抑制して喜ばれ、我々も事業の安定化につながる。アーバンエックステクノロジーズは当社のドラレコをつけた顧客の車がたくさん走って自治体の道路点検に貢献できるため、地域に貢献したい地元企業にアピールでき、当社の認知・信頼が最終的に保険の収益につながる」と2社との協業の意義を再確認した。

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