保険を切り口に社会課題解決策を模索 三井住友海上がスタートアップと共創イベントを実施
「MSI スタートアップ・ギャザリング」レポート
アーバンエックステクノロジーズは道路点検AIを開発
続いて、アーバンエックステクノロジーズの前田氏が道路点検AIを紹介した。東京大学の研究をベースにしたスタートアップで、前田氏自身がインフラ管理のデジタル化を研究し、社会実装するため起業した。
同社は「しなやかな都市インフラ管理を支えるデジタル基盤をつくる」をビジョンに掲げ、都市インフラの持続可能性を高めるためのソリューションを展開。顧客には行政機関が多く、行政インフラ管理者向けのサービスを提供している。
道路点検AIの「RoadManager(ロードマネージャー)」は、道路管理者向けにAIによる道路損傷を検知するサービスで、のちに三井住友海上と共同開発した「ドラレコ・ロードマネージャー」へと発展した。車載スマートフォンやドライブレコーダーで撮影した画像をAI分析して道路の破損箇所を検知するシステムだ。
このほか、市民と行政をつなぐコラボレーションツールで市民協働投稿サービス「My City Report for citizens」など、サービス全体で累計40以上の自治体での導入実績があるという。前田氏は「都市インフラをアップデートし、すべての人の生活を豊かにすることをミッションにしている」と自社を紹介した。
取り壊し予定のビルで実証実験した経験が今につながる
ソラリスは大学の研究室の一角を借りて開発していたので、十分なテスト環境が確保できなかった。三井住友海上から保有する取り壊し予定のオフィスビルで試してはどうかと提案され、ロボットを持ち込んで2022年8月に実証実験を行った。ビルは地上4階、地下1階の鉄筋コンクリートで築40年以上。配管メンテナンスは過去に行われていなかった。
「ロボットを入れてみると想像以上に激しい状況。非常にハードな条件で最初にトライしたことが今につながっている」と梅田氏は振り返った。ロボットの品質は向上し、2024年3月にはある化学プラントで、複数個所の配管を合計数十メートル走り、故障もなく成果を出したという。
保険会社と協業するメリットについては「事故に関するデータが集まっていること」と梅田氏は指摘。ビルやマンションの漏水事故、製造工場やプラントで配管に起因した火災、配管亀裂による事故など、インフラ配管は経年劣化で問題が多発している。
「こうしたところで実証実験して現場で使えるロボットの要件を確定し、配管の予防保全をしたい」と梅田氏は抱負を語った。三井住友海上が保険と合わせて提供する補償前後のソリューションへの採用を目指している。