◆上り坂は苦手だが回生ブレーキのデキは良い
試乗はベースモデルを中心に実施しました。ベースモデルは他社のBセグメントのエントリーモデルに似て、パワー感がそれなりといったところ。トルクは太く、音はほぼしないものの、上は伸びない雰囲気。上り坂ではわずかにパワー不足を覚えることも。リアもちょっと落ち着きがない印象で、よくも悪くもゴーカートフィール。とはいえ、これらは速度を出した時に抱く感想で、普通の街乗りなら、柔らかめの足と静粛性で不満は少ないでしょう。驚いたのは回生ブレーキのデキのよさ。不自然なフィールを感じることもなく、高い制御技術に驚かされました。
足は柔らかめ、と書きましたが、細かい振動をちょっと拾いがちの印象。これはクルマの足が……というより、ブリヂストンのエコピアだから? と想像します。ボディーに適度なしなり感を感じさせる乗り味で、どこか日本車的。BYDはかなり日本車を研究してクルマを作っている、と思わせました。
ロングレンジは、一言でいえば「ホットハッチ」。とにかくパワーがすごい! さらにリアの足回りも落ち着いて、それでいてしなやか。かっ飛ばさなくても、街乗りでの乗り心地の面でも、ロングレンジに軍配が上がります。バッテリーが床面にあるためか、重心の低さも印象的で、ガンガン曲がるという印象。ベースモデルとの価格差が約40万円ですが、選ぶなら絶対にコッチじゃないか! というのが正直なところです。
◆回転するモニターが便利なインフォテイメント
インフォテインメントなどの面をチェックすると、回転する大型スクリーンは確かに便利! スマホナビに慣れた身からすると、この縦の大画面は最高の一言。動作も結構サクサク。「この画面がついてきて400万円で、実質200万円台とかホントですか?」と驚きっぱなしです。
試乗車ゆえか、インフォテインメント系が完璧ではなかった部分や、シフトセレクターをはじめとしてユーザーインターフェースに独りよがりの部分もあったりします。何よりクルマそのものに粗削りな部分がないわけではありません。ですが、補助金を使えば実質200万円台で手に入る価格と、「2030年までに純ガソリン車販売禁止」をはじめとする政治家の発言。そして国産メーカーのEV車ラインアップの少なさと相まって、一部のマスコミが「EV後進国の日本、このままで大丈夫か?」と言いたくなる気持ちは理解できます。
それ以上に感心というより、脅威を覚えるのはBYDの手練れ感です。これはコストカットの話ではなく、このクルマを求めるであろうユーザー層をきちんと理解しているという意味で、とても自動車が専業ではないメーカーが造ったクルマとは思えませんでした。多くの人は徹底的にコストを削減しただけのクルマに思えるでしょうが、ドルフィンはそういうクルマではありません。金をかけるところ、かけないところのコントラストがハッキリしたクルマなのです。
今回は短い時間でしたが、販売が始まりしばらくしてから、もう一度しっかり乗って見定めたい、という気持ちになったことを申し上げます。「Build Your Dream」、なるほどね。

この連載の記事
-
第593回
自動車
【アメ車ってどうなの?】キャデラック「XT6」の3列シートSUVはさすがにデカかった -
第592回
自動車
「GR GT」はトヨタが送り出す究極のスポーツカー! V8×ハイブリッドが衝撃すぎる! -
第591回
自動車
【アメ車ってどうよ?】970万円の価値は本物? キャデラック「XT5」が予想外に最高だった理由 -
第590回
自動車
【アメ車ってどうよ?】キャデラック「XT4」は思いのほかスポーティーで楽しいクルマでした -
第589回
自動車
アイドルがレクサスLMの“アメイジング”後席体験! 家超えの超豪華空間に大興奮 -
第588回
自動車
都市型SUVの新定番! マツダ「CX-30」がもたらす新感覚ドライブ -
第587回
自動車
死角ナシの万能SUV! マイチェン版トヨタ「カローラ クロス」に乗ってわかった“しっとり快適”の正体 -
第586回
自動車
今しか選べない“熱き”ガソリンSUV!マセラティ「グレカーレ」の真髄を体感する -
第585回
自動車
カッコいいワゴンは健在! アウディの新型「A5 Avant」は流麗なデザインと広々ラゲッジでアウディらしさを継承する -
第584回
自動車
「VEZEL e:HEV RS」は後出しズルい! と言いたくなるほどイイクルマだった -
第583回
自動車
採点方式が激変の2025年「日本カー・オブ・ザ・イヤー」最終決戦! 10ベストカー試乗会レポ - この連載の一覧へ
















