このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第726回

生成AI向けGPU「Instinct MI300X」の構造と性能を分析 AMD GPUロードマップ

2023年07月03日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Instinct MI300Xは
8ダイで合計320 XCU

 さて、話を戻そう。AMDから提供されたInstinct MI300Xの写真が下の画像だ。

これは斜めになっているものをPhotoshop Workで修正したもの。したがって縦横の比率は正確ではない。ダイのほとんどはXCUで、あとは制御部だけである

 8つのGPUのダイに、それぞれ40個のXCUが搭載されているように見える。ということは、8ダイで合計320 XCUである。これはMI250Xの220 XCU(112 XCU/ダイながら2つ無効なので、110 XCU/ダイ)と比べると、わずかに1.45倍の増加に過ぎない。

 先に書いたAI性能が8倍というのは、実際にはデータ型の変更(FP16/BF16のサポートに加え、おそらくFP8をサポート)を加味しての数字と思われるので、演算器そのもので言えば4倍になると考えられるのだが、いくらなんでも1.45倍は差がありすぎる。

 ただもしここでRDNA 3の時と同様に、1つのXCUあたりの演算性能が2倍に変更されたと考えると、実質640 XCU相当になって演算器の数は2.91倍に増えた計算となる。これならわりとありそうな話である。もちろんこれではまだ4倍に達しないわけだが、Instinct MI250XはPeak Engine Clockが1.7GHzとわりと控えめである。なのでPeak Engine Clockを2.34GHzあたりまで引き上げると考えると、ほぼピーク性能は4倍になる計算だ。この場合、MI300Xの性能は下表の数字になると想像される。

MI300Xの性能
演算 性能
PF64 Vector 192TFlops
FP64 Matrix 384TFlops
BF16 Matrix 1536TFlops
FP8 Matrix 3072TFlops

 ただし、電力効率が5倍でしかないので消費電力は1.6倍に増える計算だ。Instinct MI250Xがピーク560WとされていたのでInstinct MI300Xは896W、ほぼ900Wというあたりだろうか。

「フォームファクターそのものはOCP(Open Compute Project)のOAM(OCP Accelerator Module)に互換だ」というので「では消費電力もMAX700W?」(OAMは48V供給で最大700W、12V供給で600Wが定格の上限)と聞いたら、笑って誤魔化された

 このFP8のMatrixで3PFlopsという値は、NVIDIAのH100の4PFlopsにはややおよばないように見える。ただこれはピーク性能で比較して、という話である。実際には容量は不明ながら、少なからぬであろうインフィニティ・キャッシュと、さらにHBM 3が8ch(H100は6ch)というあたり、実際には互角の性能である公算が高い。もっとも性能が互角だからと言っても、CUDAがそのまま動かないあたりがH100に対する大きなネックであることに変わりはないのだが。

 I/Oダイの構造の推定図を下図に示す。これはInstinct MI300Xを上から見た構造図で言えば左下のI/Oダイに相当する(左右対称のI/Oダイもあるはずだ)。インフィニティ・ファブリックのI/Fが4つあるが、上辺と右辺のものはI/Oダイ同士の接続用、そして下辺のものは外部接続用である。と言うのは、Instinct MI300Xを8つ搭載するソリューションが今回も展示されており、この8つのInstinct MI300Xを相互接続するのに7本のインフィニティ・ファブリックが必要である。

I/Oダイの推定図

 ただ7本だけでは相互接続して終わり(外部へのI/Fがない)なので、外部接続にも1本必要になる。4つのI/O ダイからそれぞれ2本づつ外部接続用のインフィニティ・ファブリックが出れば、ちょうど8本というわけだ。

カテゴリートップへ

この連載の記事