しばらく中断が入った「消え去ったI/F史」だが、久しぶりに復活。もっとも年末~年初はまたいろいろほかの話が入りそうなので、次が何時になるのか筆者にもわからないが。ということで今回はISA Busの話をしよう。
IBM-PCが誕生する前に普及した拡張バス
S-100 Bus
ISA Busの話は大昔、連載106回に一度書いているのだが、なにしろ10年以上も前の話なので、読まれていない読者の方が多いかもしれない。もっともこの手の古い話をする場合、もうアップデートがなかったりするので10年前の記事でもそのまま通用したりするのだが。
そもそもIBM-PCが世の中に出る「前」を考えると、あまり標準的な拡張バスというものがなかった。その中でも比較的広く使われていたのはS-100 Busだろうか? もっともこのS-100 Busも歴史はけっこう浅い。
開発したのはMITSである。MITSは連載354回で紹介した、Altair 8800を開発・販売した会社である。このAltair 8800は、最大18スロットのバックプレーンにCPUカードやメモリーカード、I/Fカードなどを接続する形で構築されていた。
1975年にS-100 Busが世の中に登場すると、サードパーティーがS-100 Bus向けの拡張カードを出すようになり、またAltair 8800互換のマシンなどもS-100 Busをベースに構築された(代表例がCromemcoで、IMSAI 8080と同じ筐体にZ-80ベースのCPUボードを装着したZ-1やZ-2などのシステムを1976年から提供していた)。
この結果としてS-100 Busは1970年代後半にデファクトスタンダードの拡張バスになっていた。ちなみにこのS-100 Busは1983年にIEEE-696として標準規格になっている。S-100の名称はStandard-100から来ており、100pinのカードエッジを持つ標準規格の意味である。MITSはS-100の利用に制限を設けなかったし、ロイヤリティなどもなかった(だからこそIEEEで標準規格になった)。
もっともIEEE-696ではほぼ100pinの信号線をほぼ使い切っている(NDEF:Not to be defined signal、未使用となっているpinは3つしかない)が、Altair 8800は使っていないpinがもう少し多かった。このIEEE-696の標準化成立のはるか前にMITSが消えていたのは、この時代では良くありがちな話である。
S-100 Busは8080に向けたバスということで、電源に+8V/+16V/-16Vが供給されており、クロックが2MHzに固定されている(もっともこのクロック信号は、別にアドレス/データバスとは無関係である。
では送受信はどうやって行なっていたかというと、RDY/XRDY/HOLDなどの信号でハンドシェイクをしており、バスサイクルは最小166ns、最大2000nsと規定されていたので信号速度で言えば0.5MHz~6MHzが可能だった)とか、今から思うとあまり使いやすいとは言えなかった気もする。
その一方でなぜかデータバスが16bit分ある(Altair 8800はこのうち8bit分しか使ってなかった)とか、Vetored Interrupt Lineが8本用意されている(これは8259に合わせたのだろうが)など、意外に広く利用できる要素もあった。それもあってMITS以外にIMSAIやChromemco、TDL、Processor TechnologyといったメーカーがS-100 Busベースのマシンを出荷したし、一部16bit CPUを搭載したマシンも1980年代に出現している。

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