東京都では、近年若い世代に向けた起業家教育を多角的に行っている。2022年6月からは、東京都「小中学生 起業家教育プログラム」として、都内の小中学校から公募をし、そのうち10校に対して起業家教育プログラムの導入を2年間の無償支援を行う。
また、個人に向けては、都内の小中学生を対象に参加者を「起業家教育」体験イベントを2022年8~9月にオンラインで開催した。現代社会に必要な “起業家精神”を育む、新たな教育プログラムとして、東京都産業労働局らが事業を推進している。
東京都の小中学生が本格的な起業体験に挑戦!
今回は、8月に都内の中学生向けに行われた「起業家教育」体験イベントの模様を紹介する。イベントはすべてオンラインで行われたが、公募と抽選によって選ばれた20名の参加者には、あらかじめ当日使用する紙資料「On-line V-Projectノート」(プログラム提供・監修 株式会社セルフウイング)が自宅に届けられた。事前に、ノートにある「自己紹介シート」や「会社づくりの流れ」などを記入し、イベントに挑んだ。
イベントは朝10時から18時までと、昼食や休憩の時間をのぞいて約7時間のプログラムとなっており、1日で会社を設立し、商品企画から、資金調達、原材料の仕入れ、商品の販売・決算までの流れを体験した。
テーマは「人の生活の役に立つロボット」。身近な課題を解決できるロボットをグループで考え、専門家にアドバイスをもらいながらプレゼンを行い、最後に振り返りまでをするという本格的なものだ。
プログラムでは最初に、20人の中学生が4~5人ずつのグループを組み、その中で「社長」「宣伝マネージャー」「仕入れマネージャー」「会計マネージャー」「商品企画マネージャー」という5つの役割を自分たちで決定した。そして全員で話し合いをしながら会社名を決定したところで、いよいよ新規事業のスタートだ。
まず各自がどんなロボットを開発するかを考え、次に会社のメンバー全員でひとつの商品にまでつくり上げていく。その際も、ただアイデアを出し合うだけでなく、「どうしたらもっとよい製品になるか」「コストを抑えられるか」「どんな機能が求められているか」といった視点で話し合いがされた。
商品が決まったら、次は仕入れだ。今回のプログラムでは「ベースロボット」「機能追加」などで価格が決まっており、機能を増やしたりデザインを工夫したりすることで、原価は上がっていく。「利益を出すためには、どうしたらよいか」という観点で、材料費と販売価格、さらに売る個数までを決めていく。事業計画が決まったところで、一度サポーターに話を聞きに行く時間が設けられ、そこで販売価格や個数などの設定を見直すようにアドバイスをもらう会社もあった。
このプログラムでは最後に販売までを行うため、自分たちのロボットを他者にアピールする広報活動も必要だ。プレゼンに向けて、商品の良さを盛り込んだポスターをつくったり、スピーチ内容を考え練習したりするため、時間はあっという間に過ぎていった。