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東京都、学ぶ力や得意が見つかる起業家教育プログラムの実施校を募集

東京都 小中学校向け起業家教育プログラム 説明会

 東京都は2023年7月31日、都内の小中学校を対象とした「小中学校 起業家教育プログラム」の事業説明会をオンラインで開催した。本事業は起業のすそ野を広げるための取り組みとして、都内の小中学校を対象に起業家教育プログラムの実施を支援するもの。説明会では、過去のプログラムのダイジェスト動画による紹介、事務局による事業概要説明、早期起業家教育の第一人者である株式会社セルフウイングの平井由紀子氏による講演が実施された。

事業計画、商品の製造、販売まで、事業化の流れを授業で体験

 東京都では2030年度までに都内の開業率12%を目指しているが、多くの人にとって「起業」はまだまだ身近なものではないのが現状だ。小中学生起業家教育プログラムは、東京都の開業率向上を目指し、多くの人の起業への関心を高め、起業へのすそ野を広げるために令和元年度より開始している。本プログラムでは、将来、小中学生が仕事を選ぶ際に、「起業」が選択肢のひとつとなるよう、会社の設立から商品企画、販売、広報、決算までの一連の流れを体験する起業家教育の導入および実施を支援する。これまでの支援校では「総合的な学習」時間を活用し「地域をPRするお土産をつくる」などをテーマとして地域学習を兼ねて実施されている。

 説明会では、令和4年度に導入支援した11校のうち2校の事例をまとめたダイジェスト動画を上映。千代田区立泉小学校は、5年生を対象に「嬬恋の農産物をPRするグッズをつくろう」をテーマに商品を開発し、疑似マネーで販売を体験した。板橋区立上板橋第四小学校は、6年生が対象。「上板橋の良さをPRするコーヒーパッケージを作ろう」をテーマに、地域の珈琲店で委託製造した商品を保護者向けに現金で販売した。市場調査から始まり、自分たちで考えた事業計画をもとに本物の金融機関に資金相談するなど、リアルな経済活動を体験できるのが本プログラムの特徴だ。

小中学生起業家教育プログラム事業概要

 令和5~6年度の小中学校向け事業は、起業家講演の実施支援(出前授業)、起業家教育プログラムの実施支援の2つ。

「出前授業」では起業家講師を派遣し、1コマの授業で講演会の実施を支援するもの。令和6年1月末まで30校を先着順にて募集している。また総合的な学習などの時間を利用して「起業家教育プログラム」を実践する学校を10校募集している。令和5年11月末まで募集し、希望に応じて指導案を作成し、実際のプログラムは令和6年度からの実施となる。

「起業家教育プログラム」採択後のスケジュールは、3月末までに採択校説明会、プログラム案の策定、実施時期の調整サポートを実施。4月以降から順次打ち合わせをし、具体的なプログラムの内容を決定。プログラムの開始1カ月前頃に指導者向けの教育を実施して、プログラムをスタートする流れだ。

 プログラムは以下10のステップに沿って進められ、「誰に」、「何を」、「どのように売るのか」の部分をカスタマイズして実施される。パターンとして、与えられた材料を使って手作りで商品を制作、外部委託で商品を製造、商品イメージのポスター制作(実際の物品の仕入れはしない)といった3パターン、さらに学校側のテーマに沿ってカスタマイズ可能だ。

(1)起業家の話を聞く
(2)会社を作る
(3)市場調査をする
(4)計画を立てる
(5)資金を集める
(6)材料仕入れ
(7)商品製造
(8)広告販売
(9)決算・融資返済
(10)振り返り

 具体的な支援内容としては、(1)の起業講師の調整や謝礼は事務局が負担、(5)については金融機関を手配、材料仕入に必要な材料は事務局が購入(1校当たり5万円まで事務局が負担)、プログラムに必要な指導案とワークブック等の教材提供、指導者教育の実施などが含まれる。なお、翌年以降も継続実施を希望する学校には、出前授業や教材提供などの支援も実施している。

早期アントレプレナーシップ教育を総合的な学習の時間等で活用するための方法とその効果

 説明会の後半には、「総合的な学習における早期アントレプレナーシップ教育の活用とは」と題し、早期起業家教育の第一人者である株式会社セルフウイング 代表取締役 平井由紀子氏による講演が行われた。

 早期アントレプレナーシップ教育は、1996年から産官学で共同研究が行われており、プログラムの学習効果が検証されている。平井氏は、「起業家精神(アントレプレーナーシップ)教育は、起業のためだけの教育ではない」と定義しており、誰でもが生まれながらにしてもっている資質であり、どのようなキャリアにつくにも必要な「生きる力」として、文部科学省も小学生からのアントレ教育を推奨している。アントレプレナーシップ教育の目的は、目標に向かって頑張る力、人とうまく関われる力、諦めない力、といった非認知能力を伸ばすことだ。

 アントレプレナーシップ教育は導入時期と継続的な実施が重要であり、小中学でベースをつくることで、高校、大学、社会人のキャリアとして起業が選択肢のひとつになりうる、と考えられる。次に、公教育で実施することの重要性として、すそ野を広げるために、誰もが1度は受講できる環境をつくりことが大事だと説明。まずは学校での授業で体験し、イベント等の募集型プログラムなどを受講して知識やスキルを積み重ねることで起業や新産業の創出につながる。

 プログラムの特徴として、失敗から自分で学べる、努力の結果が数字で客観的に評価される、たくさんの役割の中から自分の得意なことを見つけられる、大人と同じ活動を経験することで何のために勉強や努力をするのかを理解できる、自分たちの想像力、チームワーク、努力次第で良い結果が出せることを自覚する、といった5つを挙げた。

 最後に、起業家教育を実施するための協力体制をつくるために、サポート体制、起業家や金融機関など外部との連携、効果的な教材や事例の共有などを提案した。また、保護者の理解を得るために、保護者向けセミナーも実施しているそうだ。

 新しい産業が生まれ続ける社会をつくるには、各地で継続的な起業家教育の実施体制とエコシステムを構築することが課題だ。平井氏は「(起業家教育プログラムを)受講した子どもたちが、将来は地域で教える側に回ってくれるような継続的な実施体制を目指していきたい」と語った。

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