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微量の汗から体内のコンディションを可視化。生体分子分析サービスによる新市場開拓を目指すPITTAN

スタートアップスタジオ発のディープテック創出

連載
研究開発型イノベーション創出のケーススタディ

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創業メンバーの獲得は資金調達にも大きく影響する

― 事業化に利用した支援制度で役に立ったこと、改善してほしいことは?

辻本:技術開発では、角田先生からアドバイスをいただき、来年度から共同研究を行う予定です。

 NEDOの支援では、起業直後にNEP-Aに採択いただきました。補助金の500万円のうち350万円は島津製作所の分析機器でほとんど使ってしまったのですが、資金面以上にカタライザーである八重樫馨氏(アイ・バック株式会社)からのメンタリングで学ぶことが非常に大きかったです。マインドの持ち方、大企業との付き合い方をアドバイスをいただけました。いろいろな人をご紹介いただき、人的なサポートもとてもありがたかったです。

 課題を感じたのは、日本にはディープテックの研究開発に求められる分析機器がそろっている公的なラボ施設が少ないことです。ようやく神戸のスタートアップ・クリエイティブラボ(SCL)との仮契約にこぎつけましたが、空きが少なく、このような施設が不足していると感じています。創業フェーズでは必要な設備や機器を十分に自費でまかなえないので、民間のリソースを使わせてもらえるような制度づくりなど、シェアラボの拡充をお願いしたいです。また、スタートアップ同士が知見をシェアできるようなコミュニティも不足しています。

神戸のスタートアップ・クリエイティブラボ(SCL)
https://kobe-scl.com/

― VCからの出資がすでに内定されているそうですが、資金調達ではどういった点を意識してアピールされていますか。

辻本:我々は技術に絶大なる自信を持っていますが、私自身がキャピタリスト時代に評価していたポイントは、事業性です。Techstars(注3)などのメンタリングを受けながら、ビジネスモデルを意識して磨いてきたことで、将来的には大きな市場が拓けるだろうという期待感を持っていただけたように思います。

 またいちばん大事なのはメンバーです。生体代謝物の微量分析で世界トップクラスの角田先生、博士号を持ちつつコンサルやVC経験もある辻本、海外SaaSスタートアップでの事業開発とマーケティング経験も豊富な前田さんに加えて最先端の研究を実用化するために島津製作所でエンジニアをしてきた児山さんがジョインする可能性は資金調達時に評価される点です。複数の大手企業からも副業や出向などを含めて参画してもらう予定です。

 スタートアップの場合、技術があってもビジネスモデルを実行するメンバーの不足から資金調達につまずくケースがよく見受けられます。私の場合、ネットワークをうまく使って人を紹介してもらい、こういう世界を創っていきたい、というビジョンを熱心に伝えて、資金調達でフルコミットしてもらえるまでは、ボランタリーで関わってもらえる状況を作っていきました。

※注3
PITTANはJETRO主催「2022年度スタートアップシティ・アクセラレーションプログラム」のGlobal Scaleコースに採択。世界規模の著名アクセラレーターであるTechstarsのメンタリングや米国視察のプログラムに参加している。

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