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実体験から知るスタートアップだからこその特許の重要性

特許庁IP BASEセミナー「スタートアップが語る知財戦略のリアル~実体験からわかる、それやったらあかんやつ!?~」

特集
STARTUP×知財戦略

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ロボティクス スタートアップの知財とお金のリアル

 チトセロボティクスは、産業用ロボットの制御プログラミングソフトウェア「crewbo studio(クルーボスタジオ)」を開発するロボティクススタートアップ。同社は人間の神経系をアルゴリズム化した技術をコアに、短期間かつ低コストでの産業用ロボットの導入を支援するサービスを展開している。産業用ロボットの導入には、初期設定やプログラミングに多額の費用と数か月もの期間がかかるのが一般的だが、crewbo studioでロボットの制御プログラムを作成すれば、こうした設定や調整なしに低コストかつ短期間での導入が可能になる。

 同社は2020年度のIPASに参加し、メンタリングを経て、従来の受託によるロボット導入事業から制御技術と知財を主軸にしたビジネスに方向転換し、「crewbo」シリーズを開発した経緯がある。

 西田氏は、知財にまつわる実体験として3つのケースを挙げた。

 1つは、企業からのロボットシステム開発の案件で、見積もり後に特許譲渡を要求された、というケース。権利譲渡が前提であれば見積金額が変わるはずだが、顧客企業との関係上、スタートアップ側は強く出づらい。そこで対策として、知財の帰属先を明確にした契約タイプのメニューを提示するようにしているそうだ。

株式会社チトセロボティクス 代表取締役社長 西田亮介氏

 柿沼氏は、「AI開発委託案件ではデータを持つ委託者と開発事業者との間で権利帰属の問題は必ず発生します。権利帰属の条件が後出しになるとスタートアップは立場的に厳しいので、先に契約タイプのメニューを提示するのは、交渉コストも下がり、すごくいい戦略ですね」と好評価。また「スタートアップは時間が大事。契約交渉をしてみて、交渉態度がいかにも大企業的で、想定外に交渉が長引くような企業とは、仮に契約を締結してもうまくいかない可能性が高い。そのような場合は早めに見切りを付けることも大事。」とも。

 松本氏は「共同開発の成果を特許出願する場合、自社にとってコアなのか周辺なのかの見極めが大事。周辺技術であれば譲ってもいいが、コアの技術は自社で確保しておくこと」とアドバイスした。

 2つ目は、資金調達の考え方について。西田氏は4社目の起業で、過去3社では総額5.5億円を資金調達してきたが、チトセロボティクスでは資金調達をしていない。その理由として、VCなどから資金調達するとEXITを目指さなくてはならないなど、創業者の自由度が制限されてしまうことを挙げる。研究開発費は、国の支援事業での補助金や助成金を活用してまかなっているそうだ。

 松本氏からは、「研究開発要素の強い会社が資金調達する場合はタイミングが肝心。投資家はリターンを求めますし、投資を受けたら経営者はそれに応える義務が生じます。事業化までのロードマップが見えるまでは安易に調達しないという考え方も重要です」とコメントがあった。

 3つ目は、ソフトとコンサルティング価格の値付けの難しさ。産業ロボットの導入は人件費の削減になるが、経理上は機械装置として扱われる慣習があり、価格を上げづらいのが悩みだという。現在、チトセロボティクスでは製品価格は競合の4分の1程度に抑え、コンサルティング料はロボット業界の相場に比べるとやや高めに設定している。

 松本氏は、「本来は知財に価値があるのですが、それだけではディスカウントされてしまいます。知財よりも製品、製品よりも会社としてパッケージングすることに価値が生まれます」と話す。

 柿沼氏は、「おそらくロボットだけで顧客企業の課題が全て解決することはないので、ロボットと合わせてコンサルティングに求められる部分は大きい。ロボットという製品とコンサルをセットで提供するのはいい形だと思います」とコメントした。

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