PLATEAUのピッチイベントにスタートアップ9社が集結!"サステナブルな3D都市データの整備を支援するAI"「Deep3」がグランプリ
「PLATEAU STARTUP Pitch」レポート
「3D都市モデルでできること」を会場で体験
ピッチ会場では、登壇企業以外にもPLATEAUを活用した注目のサービスやソリューションのデモ展示が行われていた。メタバース、AR/VR、デジタルツイン、3D都市モデルでどのようなことができるようになるのか、少し紹介していこう。
■PLATEAU × XRコンテンツ(株式会社シナスタジア)
株式会社シナスタジアの展示スペースでは「PLATEAU × XR」というAR/VRコンテンツを展示。PLATEAUの3D都市モデルを活用して、ユーザーは実際に走るバスに乗りVRゴーグルを装着し、現実の空間の中にバーチャルの造形を重ね合わせた体験ができる。例えば街の中が水族館になったりする。こうなるともう、バスは移動の手段ではなくエンターテイメント施設という位置づけだ。
また、PLATEAUを使った自動運転シミュレーションの開発にも参画している。LOD3の空間上に自動運転車を走らせて、交通をシミュレーションすることで自動運転の開発に伴う課題の検証などに取り組んでいる。シミュレーションで何十台と走らせればそれだけ膨大なデータを収集することができる。こうした分野ではどうしても実証実験のコストが高くなるので、大きなメリットがある。
■自治体と市民のためのワークショップツール(株式会社ホロラボ)
株式会社ホロラボでは、自治体と市民のコミュニケーションを円滑に行うためのワークショップツール「Fieldwork AR」「WorkShop AR」、「HoloMaps」を開発した。PLATEAUの3D都市モデルとXR技術をフル活用したもので、八王子市北野の公共施設の大規模再編計画における市民との対話のためのワークショップ全10回で使われた。
Fieldwork ARでは1チーム10人くらいの参加者がXR機器を装着し、街歩きを行う。市の職員が立体映像で表れ、要所要所で説明をしたり、この建物がなくなったらどんな風景になるのか、PLATEAUデータを消すことで目の前に表示する。参加者はプラットフォーム上につぶやき動画を投稿できるようになっていたが、その反応は非常にアクティブで、1チームだけで1時間で400件もの投稿がアップされたという。
Fieldwork ARで街歩きをし、その土地の特性を知ったうえで、今度はWorkshop ARでボードゲーム的な要素にARを組み合わせて、再開発のアイデアを話し合う。「高層ビルがあったらどうなるだろう」と高層ビルのカードを置くと、AR上で3Dの高層ビルが表示されるという具合に、ARで配置することで「どうなる?」の部分をより具体的なイメージをもってディスカッションできる。
■誰でも簡単に3Dの地図を作成できるプラットフォーム(株式会社ユーカリヤ)
株式会社ユーカリヤが提供する「Re:Earth」は誰でも簡単に3Dの地図を作成できるプラットフォームだ。3Dの地図というと、従来は、専門のファイル形式を専門のソフトウェアで扱うというプロのカテゴリー。それを誰でも、ブラウザ上でノーコードで扱えるようにしたものだ。
Re:Earthはフィジカル空間の情報をバーチャル空間に再現するデジタルツインの基盤という位置づけで、防災や交通、都市計画などさまざまな分野、用途で使われているという。例えば、ある地域における交通事故の発生を時系列で可視化することで、どのあたりで何時頃に事故が起きているかを直感的に掴むことができる。あるいは地域に住む人たちがどういう活動を行っているかを集めることで、地域の人たちがコミュニケーションを取る場所が可視化できたりするという具合だ。
技術的には、世界で初めてWebGISにプラグインシステムを導入し、拡張性・汎用性に優れていることが挙げられる。Re:Earthは東京大学渡邉英徳研究室との共同研究により開発を進めているもので、オープンソースとして公開されている。今後、解析やリアルタイム処理の部分も強化していきたいという。
新たな領域でのシナジーに期待
最後に、ピッチイベントとして9社の登壇を終えた後の審査員の講評をまとめたい。
スタートアップ企業でデジタルツイン事業に取り組むSymmetry Dimensions Inc.の清水直哉氏は「多彩なアイデアに非常に刺激を受けた。自分たちだけで実現できない部分がどうしてもあるので、ぜひみなさんと協力していきたい」と述べた。
株式会社ANOBAKAの長野泰和氏は、ピッチを行った9社に向け、「ある程度事業が形になっているところはこのまま上場を目指して欲しい、まだシード期の企業は事業を固めているところだと思うので、何かあれば相談を」とエールを送った。
凸版印刷株式会社の名塚一郎氏は、「取り組み自体のおもしろさから進める状況から、社会にどういう課題があるのか、それを解決し得る方法は何か、考えるところへ進んでほしい。また凸版としてもデジタルツインやメタバースに取り組んでおり、スタートアップ企業とシナジーをどうやって起こしていけるか検討していきたい」と述べた。
プロジェクトをまとめる国土交通省の内山裕弥氏は、「いずれも興味深く意欲的なアイデアが聞けて、非常に勉強になった」と述べた。PLATEAUと関わりの少なかった分野との接点が生まれたのも大きな成果だったとしている。
ピッチを行った9社および会場での展示企業も含め、PLATEAU × ビジネスの種がこの先どう展開されていくか期待したいところだ。