AIで細胞解析を革新。あらゆる産業への応用展開を狙うCYBO
細胞解析プラットフォームでまずは日本人の2大死因に立ち向かう
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血栓症のリスク診断を実現するCYBOの高速イメージング技術
対象となるのはがんだけではない。同社の高速イメージング技術は、さまざまな用途での利用を見越し実験が進められている。
心筋梗塞や脳梗塞はアテローム血栓症と呼ばれ、世界の死因の第1位、2位を占める疾患であり、日本でもがんに続く死因に挙げられている。この血栓症となる過程において、血液中の血小板が血管内皮の損傷を受けて活性化することが知られており、リスク判別の早期バイオマーカーになりえることが以前より指摘されていた。
しかし血小板は外部から刺激を受けると容易に活性化してしまうため、血中の活性化状態を正確に定量解析することは極めて困難だった。
CYBOは東京大学との共同研究において、同社の高速イメージング技術を用いて血液中の血小板ひとつひとつを撮像し、AIで画像解析する技術の開発に取り組んだ。この手法を用いると、血小板の活性化状態を正確に計測できる。
「この共同研究から新型コロナ患者の重症化リスク検査の成果についてすでに論文発表したが、この技術は心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症に対しても適用可能なのではないかと考えている。心筋梗塞や脳梗塞に対しては、発症後に発見されて緊急で治療されることも現状では多いが、血液検査による簡便な血栓リスク検査が実現すれば、救命救急になる前に予防的な投薬や重点的なモニタリングを行うなど、発症前に手厚いケアが可能になるのではないか。そういった社会に向けて利用できる検査技術ができつつある」(新田氏)
医療だけでないあらゆる産業の基盤となる細胞解析プラットフォームへ
新田代表は、ソニーでセルソーターの開発や大学発ベンチャーなども含め、過去20年以上細胞解析ビジネスに携わってきた経験を持つ。
「顕微鏡検査の業界は、過去10年間の技術進歩がかなり小さかったのではないかと感じている。この10年間でスマホのカメラは1眼ではなく3眼くらいが普通になっており、オンライン会議システムの普及や4K動画も当たり前になった。そういう社会の変化があるのに、顕微鏡検査はまったく変わってこなかった。シンプルに、他の業界で当たり前のような技術をこの業界に持ってくるとかなり革新的なことができると思っている」(新田氏)
現在はSHIGIの量産試作機が完成し、いくつかの医療機関と共同でその実験運用を行っている。これを向こう3年程度できちんと事業化することが新田氏の当面の目標となっている。それと並行して、医療はもちろんそれ以外の分野にもアプリケーションを拡げていきたいと語る。
「ソフトを増やしていきたい。私は以前ソニーに勤務していたのでよく引き合いに出すのだが、ゲーム機プラットフォームはいろんなソフトが使えるようになっていて、たくさんのソフトがあることでハードウェアの価値が出てくる。同じようにいろんな検査ができるAIを出していきたい。がん検査や血液検査にもいろいろとあるし、その他でも例えば食品分野とかエネルギーなどにも使えると思っている。海外もぜひ狙っていきたい」(新田氏)
コロナワクチンをはじめ、遺伝子解析が我々の生活でさまざまな形で役立っているように、細胞解析があることで新たに知れるデータもこれから増えてくる。まずは医療からのスタートとなっているが、この解析技術が、食品、環境、エネルギーなどあらゆる産業における世界共通の課題を解決することを期待したい。
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