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エンジニアの幸福を探るG's ACADEMYの「エンジニア・インサイト白書」

セカイを変え、自分の人生を幸福にするカギはどこにある?

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 2030年に45万人が不足すると言われているIT人材を育成するため、小学校でプログラミング教育を必修化するなど国を挙げてエンジニアの育成に取り組み始めている。また、企業においてはすべての業務をDX対応することが求められており、非IT人材のIT人材化にも注目が集まってきている。

 そこで数多くのプログラミングスクールが、キャリアアップや給与などの待遇向上を目的にエンジニアとしての転職を目指して最新のIT技術やプログラミングスキルを教えている。しかし激務と言われるITエンジニア、ただエンジニアになることが幸せな社会人生活をつかむことに直結するわけではない。

 ではどうすれば幸せなエンジニアになれるのか。エンジニアの幸せとは何か。エンジニアリングスキルを武器に世界を変えようとする社会人向けのエンジニアスクールG's ACADEMYは200名のエンジニアへのアンケート調査と有識者へのヒアリングを通じて、エンジニアの生き方や価値観などをまとめた「エンジニア・インサイト白書(以下、白書)」を作成した。

 Linuxコミュニティに見られるような、自分の専門領域の「仕事」を無料で行うプログラマの存在は、他の業種に見られないエンジニアならではの特質であろう。この白書は、そのようなエンジニアの持つ特徴的な幸福感を、より具体的に示してくれている。詳細なデータはG's ACADEMYの公式サイトからダウンロードしてもらうとして、ここでは2022年11月1日に開催されたメディア先行発表会で公開された白書からいくつかのポイントをピックアップし、G's ACADEMYのメンター陣によるクロストークの概要とともに紹介しよう。

エンジニア200名に聞く「何がエンジニアを幸せにするのか」

 G's ACADEMYは2015年にデジタルハリウッドグループからスピンオフして設立された社会人向けのスクールで、今回の発表会はそのファウンダーでありデジタルハリウッドの執行役員でもある児玉浩康氏(以下、児玉氏)がプレゼンテーションを行った。

「プログラミングをしてエンジニアになる職業の魅力が間違って伝わっているのではないか。曲がって伝わっているのではないかという仮説を持っていた。プログラミングができるようになると年収が上がるよとか、転職が楽になるとか、リスキリングで最初のDXにもいいらしいよとか。どちらかというと学ぶ=なにか成果につながるみたいなことが普通に語られている。

 ところが私たち1800名のコミュニティを持ってエンジニアたちと日常的に接しているものだから、エンジニアたちがそういったことを普段から希望していたり、そういうことをずっと意識しているかと言われると、全くそんなことはない。この違和感を埋める方法はないか、我々が日常的にあっている1800名の方の感覚を一般の方々にお届けするにはどうしたらいいのかと考えて、白書の制作に乗り出した。

 エンジニア・インサイト白書は年収とか勤務時間とか勤務場所といったような物理的な問題ではなくて、何を大事にしながら仕事をしているのか、ということをつまびらかにしていこうと。そこを目指したアンケートになっている。」(児玉氏)

G’s ACADEMY Founder 総責任者 児玉 浩康氏

 この白書は3つの調査から構成されている。1つは社会人になってからプログラミングスクールで学んでエンジニアになった人100名を対象に、プログラミングスクールとエンジニアとしての意識に関するアンケート調査を行ったもの。2つ目は同じアンケートをG's ACADEMYの卒業生・在籍者100名に行ったもの。3つ目は投資家、起業家、技術系企業役員など13名に対してインタビューにより意見調査を行ったものだ。

 白書から最初に示されたのは1つ目の調査対象となったエンジニアの感じている幸福度で、100点満点による回答のうち、61点以上の幸福度を感じているのは46%しかいなかった。半数以上のエンジニアが十分な幸福感をエンジニアとしての仕事から得られていない結果となっている。

 一方、2つ目の調査対象となっているG's ACADEMY卒業生・在籍者では85%が61点以上の幸福感を持っている。81点以上の非常に高い幸福感を感じている回答者も50%を超えており、調査対象の間に顕著な違いがみられる。そこでこれ以降の設問では、2つの調査グループを合わせた上で、幸福度の非常に高いグループ(幸福度が81点以上)と幸福度の低いグループ(幸福度が61点以下)の間で、回答にどのような違いが生じているのかを見ている。

エンジニアとしてのやりがいや楽しさ

  まずエンジニアとして働く上でやりがいや楽しさを感じる場面を聞いてみると、いずれのグループでも「クリエイティブな仕事ができているとき」という回答が上位にある。しかしながら「自分の思い描いたプロダクトやサービスを作っているとき」という回答は、幸福度の高いグループでは1位に来るものの、幸福度の低いグループではややランクが下がっている。

 また、幸福度の高いグループでは「フラットでGive&Giveなエンジニアカルチャーを感じた時」という回答がランキング上位に入っているのに対して、幸福度が低いグループではランキング外になっている。

エンジニアとして最も大事にしていること

 続いてエンジニアとして最も大事にしていることについて尋ねた設問では2つのグループの間に非常に大きな違いが表れていた。幸福度の高いグループは「自分が作りたいもの、やりたいことを実現すること」が2位にダブルスコアをつけて1位になっているのに対して、幸福度の低いグループでは「いい条件の会社で働けること」が上位にランクされている。

 児玉氏は「そもそも自分の創りたいと思っているものやサービスを作ることができると思っていない。そういうプログラミングをするということがあまり関係ないと思っている方は幸福度が低めになってしまうのかな。」とコメントをしている。

  エンジニアにはコミュニティ活動に熱心な人が多いが、多忙にもかかわらず収入に直結するわけではないコミュニティ活動に時間を割く動機について聞いた。この設問では、幸福度の高いグループでは上位にランキングされていた「自分が持っていないスキルやビジネス経験を持っているエンジニアに会える」という回答が、幸福度の低いグループではランキング外に落ちている。

 幸福度の低いグループは人脈や新たなスキルをTakeしたいという意識があるのに対して、幸福度が高いグループでは自分と異なる人に会ってGiveする機会を得たいと考えているのではないか。やりがいや楽しさについての設問に対して「フラットでGive&Giveなエンジニアカルチャーを感じた時」と回答があったことからもそのような推測ができる。

コミュニティ活動をする動機

企業から求められるエンジニア人材

 投資家、起業家、技術系企業役員に対する意見調査では、一定水準の技術力が大前提であるとともに、自分で成長することのできる力(自走力)、自分のクリエイティビティだけでなく顧客のニーズに向き合うこと、技術はツールでありプロダクト全体を常に意識しておくことが求められていた。

 こういったことが身についているエンジニアは企業から求められる人材であり、つまり自分の希望を通しやすいなど、より良い環境を手に入れることができる人材ということになる。幸福度の高いエンジニアになる処方箋と言えるだろう。

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