メルマガはこちらから

PAGE
TOP

「ロボットフレンドリー」な環境の実現に向け、官民のキープレーヤーが実証の成果と知見を講演

「自動配送ロボのラストワンマイルシリーズ04」レポート

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

1 2 3 4 5 6 7

三菱地所「配送/清掃ロボットを活用したユースケースの創出」

 共通テーマ「ロボットフレンドリーな施設の実現に向けて」の2番目に登壇した三菱地所 DX推進部の村松洋佑氏は、「配送/清掃ロボットを活用したユースケースの創出」と題して講演。配送と清掃の2つのロボットの取り組みを解説した。

三菱地所 DX推進部 村松洋佑氏

 不動産デベロッパーの三菱地所は、東京の大手町、丸の内、有楽町のオフィスビル開発や商業施設を展開。ノンアセット事業として「AI・ロボティクス等の最新テクノロジーの積極活用」を掲げる。経産省の予算事業で自動配送ロボットを22年1月12日から2月末に「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」で、清掃ロボットを22年1月17日から2月末に「大手町パークビルディング」と「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」で実証実験した。

 実証実験では、ビルを改造してロボフレ環境を用意。配送の流れは、スカイファーム株式会社が運営するフードデリバリーサービス「NEW PORT(ニューポート)」を利用して飲食店に注文が入ると、店舗で作った弁当を屋内型ロボットが配送する。エレベーターやフラッパー(入退館)ゲート、ドアと連携して、ロボットが近づくと自動的に開閉し、エレベーターでは人がボタンを押すことなく自律して運搬できる。

 村松氏は「ビルの地下にある飲食店からオフィス部分までエレベーターに乗ってお弁当を運ぶことができることを実証した。ただ今すぐ実用化できるかというとハードルがある」と率直に語った。実装には、ロボットの機能改善と運用の構築が課題で、例えばロボットが音を流したり、「通ります」とアナウンスしたりして注意喚起をしつつ、周囲に溶け込むことが必要という。

 実験では人がロボットに付き添ったので、配達物を誰かに持っていかれることはなかったものの、食品の場合、第三者が不用意に触れないようにすることが必要だ。今回はフードデリバリーに特化したスカイファームと連携したが、「1対1で運ぶと費用対効果を出しづらい。複数の飲食店から複数の人に運べるようになると、より費用対効果が実現できる」と指摘した。

 次に村松氏は、清掃ロボットの実証実験を動画で示し、配送ロボットとは別の課題を説明した。ロボットを運用することに人手がかかってしまい、ロボット活用による清掃効率化の実現が難しい。現場にはロボット導入が困難な場所も存在し、場合によっては清掃員の方がロボットを移動させることに時間を取られてしまい、清掃効率が低下することもあったという。「清掃は床面も壁面もする複雑な作業。ロボットと人がうまく分業を実現することによって効率的な清掃が実現可能だということが見えてきた」と話す。

 清掃ロボットが目指す世界については、「夜中に勝手にスタートして、終わったら充電ステーションに戻る。床面清掃は清掃員が朝来たら紙パックを交換するだけになれば本当にユースケースとして確立できる」とし、ビルの清掃フローにストレスなくロボットを組み込んで実現するかは大きな課題だと結んだ。

 会場参加者との質疑応答では、「ロボットの費用負担は、三菱地所がテナントサービスとして家賃に上乗せするのか」と問われた。村松氏は「色々なケースが存在すると考えられる。最終的には人手不足が発生する環境下においても、ロボットを活用することによって現状と同等以上に清潔な環境をテナントの皆様にお届けすることが大切」と答えている。

1 2 3 4 5 6 7

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー